【徹底解説】イーサリアム(Ethereum)

- 1. 【徹底解説】イーサリアム(Ethereum)
- 1.1. 本記事のテーマ
- 1.2. イーサリアムとは
- 1.3. イーサリアムの活用
- 1.4. まとめ
【徹底解説】イーサリアム(Ethereum)
本記事のテーマ
前回、【ブロックチェーン技術】ビットコインとイーサリアムの基礎知識という記事で、ブロックチェーン技術の基礎について解説しました。
この記事は、上記の記事の続きで、上記の記事にある知識を前提として記載していますので、まずは上記の記事をご覧ください。
それでは、イーサリアムについて、その仕組みや現状を徹底解説します。
イーサリアムとは
イーサリアムとは
誰でも自由にブロックチェーンアプリケーションを実装できるプラットフォームとして2015年に登場したイーサリアムは、DeFi(Decentralized Finance:分散型金融)等で注目を集めています。
イーサリアムは、送金や決済を目的としたものではなく、サービス事業者という中央管理者を必要としないサービスを実現することを目的として、汎用的なブロックチェーン上でアプリケーションを実行するためのプラットフォームとして開発されました。
イーサリアムは世界中のコンピュータで構成され、それぞれのコンピュータが故障しても、1台でもコンピュータが動作していればブロックチェーンが停止しません。そのため、ブロックチェーン上で動作するアプリケーションは不具合さえ無ければ常に動き続けます。
なお、イーサリアムにも通貨があり、ETHと略されます。
イーサリアムの仕組み
イーサリアムは、管理者がいるサーバー上ではなく、P2Pネットワーク上のすべてのコンピューター上で動作します。
スマートコントラクトと呼ばれるデータとプログラムが、イーサリアムのネットワーク上に一度公開されて動き始めると、誰にも止めることができません。
イーサリアムには、プログラムを実行する基盤として、EVM(Ethereum Virtual Machine)があります。
スマートコントラクトのプログラムのコードを記述した後に、EVMで実行可能な状態でイーサリアムブロックチェーンに公開されます。
これによって、スマートコントラクトのプログラムがEVM上で実行されます。
ビットコインと何が違うのか?
ビットコインの仕組みとしては、前回の【ブロックチェーン技術】ビットコインとイーサリアムの基礎知識という記事で紹介しました。
ブロックの生成時間が短い
ビットコインとの相違点としては、まず、ブロックの生成時間が短いことがあります。
ビットコインは、1つのブロックが生成されるまでに10分程度の時間を要するように調整されていることは前回ご紹介しました。
イーサリアムのブロック承認の速度は約15秒で、ビットコインよりも高速です。
イーサリアムのブロックのデータサイズが小さい
ビットコインでは、1つのブロックは上限1MBとされていることを前回ご紹介しました。
イーサリアムでは、ブロックサイズは、実行中のスマートコントラクトの複雑さによって異なります。
イーサリアムの通貨であるETHの送金や、スマートコントラクト実行のトランザクション承認には、手数料が必要となりますが、この手数料をガス(Gas)と呼びます。
イーサリアムでは、1ブロックを生成するために必要なGasの上限が設定されています。容量で見ると、現在、ほとんどのイーサリアムブロックのサイズは2KB未満となっています。
ETHトークンは発行され続ける
ビットコインには発行上限枚数が定められており、発行枚数は約4年に一度半減することを前回ご説明しました。
ETHは発行上限枚数が定められておらず、毎年一定の数で生成され続けます。
ただし、現在イーサリアム2.0のプロジェクトが進行中で、コンセンサスアルゴリズムがPoW(Proof of Work)からPoS(Proof of Stake)に以降することが予定されています。移行された後に、新規ETH発行がどのようになるかはまだ決定されていません。
ブロックチェーンのナカモトコンセンサスに対して、イーサリアムはゴースト(GHOST)プロトコル
ブロックチェーンでは、マイナーによるブロック承認作業によってチェーンが分裂した際に、どちらか一方のチェーンに収束させるための仕組みとして、ブロックの連鎖がより長く続いた分岐を正しいものとみなす、ナカモトコンセンサスという合意が採用されていることは前回ご紹介しました。
イーサリアムでは、1番重いチェーンがメインチェーンとして収束する、ゴースト(GHOST:Greedy Heaviest Observed Subtree)プロトコルが採用されています。
イーサリアムでは、分岐したチェーンはuncle(叔父)と呼ばれ、uncle(叔父)のブロック生成のために計算が最も多く蓄積されているブロックチェーンをメインチェーンとして決定します。
ただし、PoWからPoSに移行する際に、キャスパーと呼ばれるプロトコルが使用される予定ですが、まだ決まっていません。
ETHのマイニング報酬
ビットコインでは、マイナーはマイニングの際に、新規発行されたビットコインと、トランザクションの手数料を報酬として受け取ります。
イーサリアムでも、マイナーはマイニングの際に、新しく発行されたETHと、Gasを受け取ります。
イーサリアムのスマートコントラクト
スマートコントラクトは、イーサリアムのブロックチェーンに保存されている小さなコンピュータープログラムです。ETHで資金を提供することで、スマートコントラクト
を実行することができます。
イーサリアムでは、コードを含む新しいアカウントを作成し、トランザクションでイーサリアムブロックチェーンにアップロードすることでスマートコントラクトを設定します。
コントラクトがアップロードされると、コントラクトを実行するためにコントラクトへのETHの支払いを含むトランザクションを作成します。
各マイニングコンピューターは、マイニングプロセスの一部としてEVMを使用してコンピューター上でスマートコントラクトを実行します。
イーサリアムネットワーク上の各コンピューターは、基本的には、同じ提供情報で同じ契約コードを実行しているため、同じ結論に達します。
ブロックがマイニングされると、勝者のマイナーはそのブロックを公開し、他のコンピューターは同じ結果が得られることを検証してから、ブロックを独自のブロックチェーンに追加します。
イーサリアムのアカウント
イーサリアムにはアカウントと呼ばれる概念があり、アカウントには下記の2種類があります。
- 1つ目は、ETHのみを保持するアカウントで、ビットコインアドレスに似ています。秘密鍵を用いてトランザクションに署名することで、アカウントからETHの支払いを行うことができます。
- 2つ目は、スマートコントラクトを持つアカウントで、スマートコントラクトはETHを送信するトランザクションで実行されます。
また、イーサリアムのアカウントは、下記の4つの状態を持っています。
- nonce:ETHのみを保持するアカウントである場合、この数はアカウントのアドレスから送信されたトランザクションの数を表します。スマートコントラクトを持つアカウントの場合、この数はアカウントによって作成されたコントラクトの数です。
- balance:このアカウントが所有するWeiの数です。Weiは、ETHの最小単位です。
- storageRoot:マークルパトリシアツリー(Merkle Patricia tree)という、ツリー状のデータ構造のルートノードのハッシュです。ルートノードのハッシュは、データの安全なIDの役割となっています。
- codeHash:このアカウントのEVMコードのハッシュです。ETHのみを保持するアカウントの場合、codeHashは空になります。
イーサリアムの手数料(Gas)について
スマートコントラクトを実行するときは、ネットワーク全体のすべてのマイナーに、それぞれがネットワーク内で個別に計算を実行するように依頼します。この時マイナーに対して支払われるのがGasです。
スマートコントラクトの複雑さ(計算量や種類、ストレージに使用されるメモリ等)が増えるほど、スマートコントラクト実行のために必要なGasの量が多くなります。
また、Gasの価格は、スマートコントラクトを実行したい人が設定します。
スマートコントラクトを実行したい人は、GasリミットとGasの価格を設定しますが、Gasの価格とGasリミットの積は、トランザクションを実行するために支払う意思のあるWeiの最大額を意味します。
例えば、コントラクトを実行したい人が、Gasリミットを10,000に設定し、Gas価格を10gweiに設定すると、そのトランザクションを実行するために最大10,000 x 10 gwei = 1,000,000,000,000,000となり、ETHに換算すると0.001Etherを支払う意志があるということを意味します。
このGasリミットとGas価格の積が、スマートコントラクト実行のために必要なGasの量に不足すると、Gas不足でスマートコントラクトの実行が失敗します。トランザクション処理は中止され、すべて元の状態に戻されます。また、失敗したトランザクションが記録され、試行したトランザクションと失敗した場所が示されます。
なお、失敗しても、計算を実行するために労力が費やされているため、Gasは返金されません。
スマートコントラクトを実行するためにGasの支払いを必要とすることで、悪意のある者からの不正なスマートコントラクト実行を防止する効果があります。
一方で、トランザクションの数が増えると、Gas代が高いトランザクションから優先的に処理されるので、Gas代の基準値が上がり、Gas代が高騰するという問題が生じています。そこで、現在アルゴリズムの変更が計画されています。詳細は後述の「イーサリアム2.0」をご覧ください。
イーサリアムのトランザクション
イーサリアムのトランザクションには、メッセージの呼び出しと、コントラクトの作成という2種類があります。
全てのトランザクションには、次の情報が含まれています。
- nonce:送信者から送信されたトランザクションの数。
- gasPrice:トランザクションの実行に必要なGasの単位あたりに、トランザクションを実行したい人が支払う意思のあるWeiの数。
- gasLimit:トランザクションを実行したい人がこのトランザクションを実行するために支払う意思のあるGasの最大量。計算が行われる前に設定され、前払いされます。
- to:受信者のアドレス。コントラクト作成トランザクションでは、コントラクトアカウントアドレスがまだ存在しないため、空の値となります。
- value:送信者から受信者に転送されるWeiの量。コントラクト作成トランザクションでは、この値は、新しく作成されたコントラクトアカウント内の開始残高となります。
- v,r,s:トランザクションの送信者を識別する署名を生成するために使用されます。
- init:コントラクト作成トランザクションのみに存在する値で、新しいコントラクトアカウントを作成するために使用されるEVMコードのフラグメントです。
- data:メッセージ呼び出しにのみ存在する値で、入力データです。スマートコントラクトを実行する時に、何か値が必要な場合はこのフィールドに格納されます。
コントラクトの作成トランザクション
新しいコントラクトアカウントを作成する際、アカウントのnonceがゼロに設定され、送信者がトランザクションで値としてETHを送信した場合はbalance(アカウントの残高)をその値に設定し、storageRootを空に設定し、コントラクトのcodeHashを空の文字列のハッシュとして設定します。
このように、アカウントを初期化すると、トランザクションで送信されたinitコードを使用して、実際にアカウントが作成されます。このinitコードの内容に応じて、様々な処理が実行されます。
コントラクトを初期化するコードが実行されると、Gasを使用します。この時、Gasが不足するとトランザクションは失敗し、トランザクション実行前の状態に戻りますが、コントラクトの作成が失敗した場合にはGasが返金されます。
初期化コードが正常に実行されると、最終的なコントラクト作成コストが支払われます。この最終コストを支払うのに十分なGasが残っていない場合、Gas不足でトランザクションが失敗します。
最終コストの支払い後、未使用のGasはトランザクションの元の送信者に返金されます。
メッセージの呼び出しトランザクション
メッセージの呼び出しトランザクションは、コントラクトの作成トランザクションと似ていますが、メッセージ呼び出しの実行では新しいアカウントを作成しないため、initコードは含まれません。また、Gas不足等でメッセージ呼び出しの実行が失敗した場合、使用されたGasは返金されません。
イーサリアム2.0
現状のイーサリアムは、取引が膨大になるにつれてネットワークが混雑し、トランザクションの遅延が起きるスケーラビリティ問題が発生しています。特に、前述したようにGas代が高騰する問題が顕著です。Gas代が高騰すると、イーサリアムを使いたくても使えないという状況になるため、現在改善が検討されており、イーサリアム2.0と呼ばれるプロジェクトで進められています。
イーサリアム2.0では、主に、シャーディングの実装とコンセンサスアルゴリズムの変更が行われる予定です。
プロジェクトは、段階的に進行する予定で、フェーズ0ではビーコンチェーンを稼働させ、フェーズ1ではシャードチェーンを実装し、フェーズ1.5で現在のイーサリアムのメインネットをシャードチェーンにドッキングし、このタイミングでコンセンサスアルゴリズムがPoS(Proof of Stake)に変更される予定です。
その後、フェーズ2でシャードチェーンを全稼働させることが計画されています。
この記事を執筆している時点で判明している情報では、2020年12月1日に既にビーコンチェーンは稼働しており、フェーズ1は2021年と見積もられており、フェーズ1.5以降は2022年と見積もられています。
ビーコンチェーンとは
ビーコンチェーンは、最初は、現在稼働しているイーサリアムメインネットとは別に存在しますが、最終的にはドッキングされる予定です。
ビーコンチェーンの稼働は、イーサリアムにPoS(Proof of Stake)を導入することが目的です。
後述するシャードチェーンが、PoSコンセンサスアルゴリズムが設定されている場合にのみ、イーサリアムに安全に実装することができるため、ビーコンチェーンはシャードチェーンの実装のために必要な過程となっています。
シャードチェーンとは
シャードチェーンは、ネットワークの負荷を64の新しいチェーンに分散し、ハードウェア要件を低く抑えることで、ノードの実行を容易にします。
シャーディングは、データベースを水平方向に分割して負荷を分散するプロセスで、コンピューターサイエンスの一般的な概念です。イーサリアムにおいては、シャーディングは「シャード」と呼ばれる新しいチェーンを作成することで、ネットワークの混雑が緩和され、現在の1秒あたりのトランザクション数の制限である15〜45を超えて速度が向上する見込みとなっています。
PoS(Proof of Stake)とは
PoSは、ブロックチェーンにおけるコンセンサス・アルゴリズムの1つで、通貨の保有量に比例して、新たにブロックを生成・承認する権利を得ることができるようにする仕組みです。
PoSは、PoW(Proof of Work)の問題点を解決するために考案されました。
PoWのアルゴリズムは、前回の記事でも紹介したとおり、計算競争となります。
そのため、悪意のあるマイナーが計算量の過半数を占有することで不正な取り引きを行うことができます。
また、マイニングには膨大な計算が必要で、大量の電力を消費します。
さらに、合意形成に時間がかかってしまう傾向があり、前述したようなスケーラビリティの問題が生じます。
PoSは、通貨の保有量に応じてマイニングを成功しやすくするアルゴリズムであるため、悪意のあるマイナーが過半数を保有するためには極めて膨大なコストがかかることから不正な取引を防止することができます。
また、計算量を競争するアルゴリズムから脱却することで、消費電力を削減し、ブロック生成速度を早めることができます。
イーサリアムの活用
イーサリアムには、近年注目されているDefi(分散型金融:Decentralized finance)、NFT(非代替性トークン:Non-fungible tokens)、DAO(分散型自律組織:Decentralized autonomous organisations)という活用方法がありますが、それぞれ以下のとおりです。
また、DeFiの動向について、関連する下記の記事も是非ご覧ください。
【徹底解説】DeFiの動向とイーサリアムのガス代高騰問題を解決するその他のブロックチェーン
分散型金融(DeFi:Decentralized finance)
前回の記事で、ビットコインは世界で初めてのDappsだとご説明しましたが、ビットコインは最初のDeFiアプリケーションでもあります。
ビットコインを使用すると、価値を実際に所有および管理し、世界中のどこにでも送信できます。ビットコインは誰にでも開かれており、誰もそのルールを変更する権限を持っておらず、政府がお金を印刷し、企業が市場を閉鎖することができる伝統的な金融とは異なります。
DeFiは、イーサリアムを使用できるすべての人、つまりインターネットに接続している人なら誰でもアクセスできる金融商品およびサービスの総称です。
DeFiを使用すると、市場は常に開かれているため、支払いをブロックしたり、何かへのアクセスを拒否したりできる中央集権的な当局はありません。これまで、低速かつ人為的エラーのリスクがあった金融サービスは、誰でも検査・精査できるコードによって処理されるようになり、自動的かつ安全になります。
例えば、世界の一部の人々は、銀行口座を設定したり、金融サービスを使用したりするためのアクセスを許可されていません。
金融サービスへのアクセスの欠如は、人々が雇用可能になるのを妨げる可能性があり、また、支払いを受けるのを妨げる可能性があります。
政府や中央集権化された機関は、自由に市場を閉鎖することができ、多くの場合、取引時間は特定のタイムゾーンの営業時間に制限されます。
送金は、内部の人によるプロセスであるため、数日かかる場合があります。
現在、DeFiにより、通貨の貸借、売買を行ったり、利子を稼いだりすることができます。
例えば、DeFiを使用してインフレを回避したり、企業が従業員にリアルタイムで賃金を支払ったり、個人の身分証明書を必要とせずにお金を借りることができるようになります。
DeFiで実現できること
stable currencies(ステーブルコイン)
ステーブルコインは、ETHの価格が変動しても、コインの価格を固定的に維持するように設計されたイーサリアムトークンです。
主に、円やドル等の法定通貨を担保とした法定通貨担保型、ビットコインやイーサリアム等を担保とした暗号通貨担保型、スマートコントラクトにより通貨の供給量を調整することで価格を維持する無担保型があります。
代表的なものには、以下のコインがあります。
tether
tether(USDT)は、ドルに固定されたステーブルコインです。
Tether Limited社にドルを入金し、Limited社が同量のtetherを新規発行します。
反対に、ユーザーがtetherをLimited社に入金することで、入金した額と同量のドルがユーザーに引き渡されます。
このように、市場に出回るtetherとLimited社がプールしているドルの量を等しく保つことで、tetherとドルの価値を一定に保っています。
Dai
DaiはMakerDAOが管理・発行を行う、暗号資産担保型のステーブルコインです。
Daiの価格は米ドルと常に連動するような仕組みとなっており、1Dai=1USD(米ドル)になるよう調整されています。
当初は、1Dai=1USDであることを維持するために、一定額のETHを担保にしていましたが、現在は複数の通貨や資産により価値の裏付けを維持しています。
USDC
USDCは、米ゴールドマン・サックスなどが出資するサークル社が運営しており、Coinbaseが初めてサポートしたステーブルコインです。
1USDCは、いつでも1米ドルに交換することができるようになっており、価格が安定しています。
Tornado cash(トルネードキャッシュ)
Tornado Cashは、イーサリアムを使ったDappsで、匿名のトランザクションを送信することができます。
通常のトランザクションでは、送信元のアカウントと、送信先のアカウントがリンクしていますが、Tornado Cashを利用すると、送信元アドレスと送信先アドレスのリンクが切断され、トランザクションのプライバシーが向上します。
Sablier
Sablierは、イーサリアムを使ったDappsで、Netflixで映画をストリーミングしたり、Spotifyで音楽をストリーミングしたりするのと同様に、お金をストリーミングすることができます。
支払先のイーサリアムアドレスを入力し、支払いサイクルと開始時期および終了時期を設定するだけで、定期的に支払を行うことができるようになります。
Compound
Compoundは分散型レンディングプラットフォームで、Compoundに資産を預け、流動性を提供することで、金利を得ることができます。これを、イールドファーミングと呼びます。また、同時に報酬としてガバナンストークンCOMPを獲得できます。これを、流動性マイニングと呼びます。
獲得したCOMPをUniswapの流動性プールに預けることで、Uniswap等でも手数料収入を得ることができ、イールドファーミングと流動性マイニングは2020年に流行しました。
貸手は、貸し出すことで借手の支払った金利を収入として得ることができ、借手は、手数料等を払って仮想通貨を借りることができます。
Aave
Aaveは、分散型レンディングプラットフォームで、フラッシュローンや信用委任といったサービスを提供しています。
貸手は、資産をスマートコントラクトにロックし流動性を提供することで、金利を得ることができます。
また、預けた資産を担保とみなし、他のトークンを借りることもできます。
借手は、無期限過剰担保または無担保のどちらかの方法で資産を借りることができます。
無担保の場合、フラッシュローンと呼ばれる仕組みを利用して、1回のトランザクションで借入と返済の両方が行われます。
例えば、フラッシュローンを使用して、ある価格でできるだけ多くの資産を借りて、価格が高い別の取引所で売却するような取引が考えられます。
借入の際に、借り手が固定金利または変動金利のどちらかを選択することができます。
信用委任システムは、Aaveに資産を預けているユーザーが、自身の与信枠を他人に委任することができます。
これにより与信枠を受け取ったユーザーは、担保資産なしでAaveから通貨を借りることができます。
Uniswap
Uniswapは、DEX(分散型取引所:Decentralized Exchange)と呼ばれる、イーサリアムのスマートコントラクトを活用して構築されたP2Pの取引所です。Uniswapはオープンソースで開発が進められており、株主やトークン保有者が存在しない分散型取引所です。
Uniswapでは、ERC20トークンを交換することができます。
UniswapはAMM(Automated Market Maker)と呼ばれ、予めERC20トークンをスマートコントラクトにプールします。
トークンを交換したいユーザーは、プールされたスマートコントラクトを相手に取引を行います。交換されるレートは、スマートコントラクトが自動で計算して提示したレートです。交換相手が見つかるまで待つ必要がなく、計算されたレートでプールにあるトークンと交換するだけです。
ユーザーは、ERCトークンをプールするとプールトークンと引き換えられ、流動性提供者(LP:Liquidity Provider)となり、Uniswap上での取引手数料0.30%(将来的には0.25%に引き下げられ、残りの0.05%はプロトコル全体の料金として徴収される可能性がある)は全て流動性提供者に支払われます。
プールトークンはいつでも原資産と交換することができ、また、例えばMakerDAOを利用すれば、Uniswapのプールトークンを担保にしてステーブルコインDAIを借りることができます。
Uniswapの仕様は変更が不可能なので、預けた人しか資産を取り出せません。
また、誰でも簡単にERC20トークンを上場させることが可能です。
Oasis
Oasisは、MakerDAOが提供するDeFiのプラットフォームです。
Oasis Trade(取引)、Oasis Borrow(借入)、Oasis Save(保存)の3つのサービスからなり、主要なERC20トークンのP2P取引、Daiの借入、Daiの預金を行うことができます。
全ての取引はスマートコントラクトによりに動作し、Daiを基軸通貨とする完全に分散化された銀行です。
また、Daiを預金することで、利息収入が得られます。預金はいつでも引き出すことができます。
ERC20トークンとは
ERC20トークンとは、ERC20(Ethereum Request for Comments: Token Standard #20)というプロトコル(規格)で、イーサリアムが定義するトークンの名称です。トークンがERC20に統一されたことで、ICO(イニシャル・コイン・オファリング:Initial Coin offering(仮想通貨での資金調達))する場合も、取引所で取引する場合も、ウォレットを利用する場合も統一されたプロトコルでプログラムを実装することができるというメリットがあります。
Matcha
Matchaは、Uniswap、Oasis等、複数の取引所から最適な価格をを探すことができます。
そのため、注文が想定していた価格を上回る/下回る不利な価格で約定されてしまう可能性が減少し、最も有利な価格で取引を行うことができます。
Augur
Augurは、分散型予測市場と呼ばれ、ユーザーは、例えばアメリカ大統領選挙で候補者が当選するかというトピックに対して、結果が「Yes」「No」を表すトークンを売買します。「Yes」「No」の二択ではなく、選択肢は複数用意することができます。予測が当たると配当が支払われます。
PoolTogether
PoolTogetherは、損失の無い宝くじと言われます。
少額の取引手数料を支払い、PoolTogetherのスマートコントラクトに資金を預けると、毎週当選者が選ばれ、資金が分配されます。
毎週末、賞金を獲得する当選者が選ばれますが、資金の利息が賞金とされるため、当選されなかったプレイヤーにも返金されます。
非代替性トークン(NFT:Non-fungible token)
NFTは、一意のアイテムの所有権を表すために使用できるトークンです。
現在、デジタルアート、カード、ゲーム等でNFTが使用され、人気が急上昇しています。
例えば、デザイナーが製作した画像等は、簡単にコピーされ、データ上はオリジナルとコピーの見分けがつきません。
NFTを活用すると、オリジナルの画像に一意の識別子を付与することができるため、オリジナルとコピーを明確に見分けることができるようになります。
これは、その他のアート作品や、カード、ゲームやVR空間内のコンテンツ等にも当てはまります。
また、現実世界のチケット等に対しても、NFTで一意に識別子を付与すると、所有者を明確にすることができます。
NFTとしてトークン化することで、1人の正式な所有者が明確になり、イーサリアムのブロックチェーンによって保護されます。そのため、所有権の記録を変更したり、新しいNFTをコピーして貼り付けたりすることはできません。さらに、例えば、NFTの販売時にクリエイターにロイヤルティを自動的に支払うことができます。
一方で、NFTを活用すると、クリエイターにとってだけでなく、所有者にもメリットがあります。
例えば、所有権がトークン化されることで、DeFiアプリケーションを使って、NFTを担保にお金を借りることができたり、世界で1つしか無い物をトークン化し分割することで共有して所有することができるようになります。
NFTを活用したDapps
分散型自律組織(DAO:Decentralized autonomous organisations)
従来の組織では、中央に意思決定をする組織や人がいて、その決定に従い組織が運営されていました。これに対してDAOは、中央の組織の代わりにルールが存在し、このルールに基づいて組織が自動的に運営されます。
イーサリアムでは、スマートコントラクトとしてルールが実装され、コミュニティーによって管理されることが一般的です。
例えば、前述した、OasisでステーブルコインDaiを発行するMakerDAOや、分散型予測市場プラットフォームのAugurは、DAOの一種です。
MakerDAOは、プラットフォーム上でスマートコントラクトによりステーブルコインDaiが発行されます。また、Augurは、予測市場の作成や市場への参加、結果の確定、支払いまで、中央集権的な組織が関与することなく、スマートコントラクトとユーザーによって運営されます。
ブロックチェーンの活用により、非中央集権的に、世界中の人々が決済等の取引を行うことができるようになりました。DAOのようにスマートコントラクトを活用して自動で運営される組織を構築することで、世界中の人々が、そのプラットフォームにいる人を信頼することなく、安心して取引を行うことができます。
まとめ
今回は、イーサリアムの仕組みや、活用方法等について解説しました。
イーサリアムから始まったDeFiの動向やその他のブロックチェーンについて記載した下記の記事も是非ご覧ください。
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