【徹底解説】DeFiの動向とイーサリアムのガス代高騰問題を解決するその他のブロックチェーン

【徹底解説】DeFiの動向とイーサリアムのガス代高騰を解決するその他のブロックチェーン
本記事のテーマ
前々回で【ブロックチェーン技術】ビットコインとイーサリアムの基礎知識、前回で【徹底解説】イーサリアム(Ethereum)という記事を掲載しました。
2008年10月に世界で初めてのブロックチェーンであるBitcoinが誕生し、2020年にイーサリアムを基盤としたスマートコントラクトを活用したDeFi(分散型金融:Decentralized Finance)が流行しました。
ただし、前回の記事でもご紹介した通り、イーサリアムは取引量が爆発的に増えたことで価格が上昇し、ガス代が高騰しているという問題がありました。
このような状況を背景に、現在は様々なブロックチェーンが注目を集めています。
本記事では、イーサリアムのガス代高騰の問題を解決するその他のブロックチェーンをご紹介したいと思います。
イーサリアムとDeFi
イーサリアムが注目を集めた背景
イーサリアムには、スマートコントラクト呼ばれる、ブロックチェーン上でプログラムが実行される仕組みがあります。
このプログラムは一般公開され、変更することができないため信頼性が高く、あらかじめ決められた通りに安全に取引が実行されることから、世界中の人々に受け入れられ、多くのスマートコントラクトが公開されました。
スマートコントラクトやDeFiについてよく分からないという方は、前回の記事【徹底解説】イーサリアム(Ethereum)をご覧ください。
中でも、2020年6月頃から始まったイールドファーミングが注目を集めました。
イールドファーミングとは
2020年6月頃に始まったイールドファーミングは、Compoundというサービスなのですが、ここではまずイールドファーミングについてご紹介します。
イールドファーミングとは、年利100%を超えるものも珍しくない高利回りの暗号通貨の運用方法で、ETHやERC20トークン、流動性マイニングのLPトークン等をスマートコントラクトに提供することで、金利や手数料収入を得ることです。
例えば、【徹底解説】イーサリアム(Ethereum)でも紹介したUniswapというサービスを例に考えます。
Uniswapは、DEX(分散型取引所:Decentralized Exchange)と呼ばれる、イーサリアムのスマートコントラクトを活用して構築されたP2Pの取引所です。Uniswapはオープンソースで開発が進められており、株主やトークン保有者が存在しない分散型取引所です。
UniswapはAMM(Automated Market Maker)と呼ばれ、あるユーザーが予めERC20トークンをUniswapのスマートコントラクトに預けておき、トークンを交換したい他のユーザーは、スマートコントラクトを相手に、預けられたトークンと取引を行います。
交換されるレートは、スマートコントラクトが自動で計算して提示したレートです。
交換相手が見つかるまで待つ必要がなく、計算されたレートで預けられたトークンと交換することができます。
トークンを預けるためのUniswapのスマートコントラクトのことを流動性プールと呼び、トークンを預けることを流動性を提供すると言います。
流動性を提供した人のことを流動性提供者(LP:Liquidity Provider)と呼び、UniswapのスマートコントラクトにERC20トークンを預けると、プールトークンと引き換えられます。この時に受け取るのがLPトークンです。
LPトークンはいつでも原資産と交換することができ、また、例えばMakerDAOを利用すれば、UniswapのLPトークンを担保にしてステーブルコインDAIを借りることができます。
Uniswapの利用者は、この流動性プールにあるトークンを利用して、自分が持っているERC20トークンと流動性プールにある他のトークンをスワップ(交換)することができます。スワップする際には手数料が発生しますが、この手数料が流動性提供者に報酬として支払われます。
Uniswap上での取引手数料0.30%(将来的には0.25%に引き下げられ、残りの0.05%はプロトコル全体の料金として徴収される可能性がある)は全て流動性提供者に支払われます。
イールドファーミングの始まり
イールドファーミングは、2020年6月頃に、暗号通貨を預けている人に対し、ガバナンストークンであるCOMPを無料配布したことが始まりです。
【徹底解説】イーサリアム(Ethereum)でも紹介した通り、Compoundは分散型レンディングプラットフォーム(Compoundは暗号通貨を貸し借りできるプラットフォーム)で、流動性を提供(保有している暗号通貨をCompoundに預けること)すれば利息を得られ、暗号通貨を借りたい人はそこから借りることができます。流動性を提供することで、金利を得ることができます。
流動性提供者が金利を得ることをイールドファーミングと呼びます。
また、同時に報酬としてガバナンストークンCOMPを獲得することができます。これを、流動性マイニングと呼びます。
流動性マイニングとは
流動性マイニングとは、イールドファーミングを行うイールドファーマーが、流動性を提供する見返りとして新規に発行されるガバナンストークン等を手に入れることです。
流動性マイニングを包括してイールドファーミングと呼ばれることもあります。
DEXでは、流動性が確保されなくては取引を行うことができません。
流動性マイニングは、新たにDEXを立ち上げる際に、最初の流動性を確保するための仕組みとも言えます。
DEXは、利息に加えてガバナンストークン等を配布することで、流動性提供者のインセンティブになることから、流動性を確保することができます。
Compoundに暗号通貨を預けると、利息とCOMPを得られることから、投機資金が流入しCOMPの価値が高騰しました。
そして、イーサリアムのスマートコントラクトは、オープンで誰でも閲覧することができるため、Compoundの仕組みを模倣して、様々なDeFiプロジェクトが急増し、2020年にDeFiプロジェクトは一気に増加しました。
そして、あまりにもプロジェクトが急増したことから、イーサリアムのネットワークが混雑し、取引手数料であるガス代が急騰しました。
その結果、ガス代が高すぎて赤字になってしまい、イールドファーミングで利益を得ることが難しくなってしまいました。
この記事を執筆している2021年4月現在で、イーサリアム2.0というプロジェクトが進行中で、これが実装されるとガス代の問題が解決するかもしれませんが、いつ頃実装されるのか、どの程度ガス代の問題が解決するのかはまだ明確になっていません。
Binance Smart Chain(BSC)とDeFi
バイナンススマートチェーン(BSC)とは
バイナンススマートチェーン(BSC)は、暗号通貨取引所のバイナンスが2020年9月にローンチしたブロックチェーンで、イーサリアムのプログラム実行基盤であるEVMと互換性があることが特徴です。
そのため、イーサリアムのスマートコントラクトをほとんどそのまま移植することができます。
BSCでは、Proof of Staked Authority(PoSA)と呼ばれるコンセンサスアルゴリズムを採用しています。
PoSAは、BNBを保有することでバリデーター(トランザクションとブロックを検証する人)になることができ、バリデーターはブロックを生成すると、そのトランザクションの手数料を受け取ることができます。BSCは、PoSAを導入することで、3秒に1ブロックという高速なブロック生成を実現しました。
前述したように、イーサリアムを利用したイールドファーミングや流動性マイニング等のDeFiは、ガス代の高騰により、利益を得ることが難しくなりました。
バイナンスチェーンのネイティブトークンであるBNBを利用すると、イーサリアムよりも手数料が抑えられることや、BNBのステーキングによって利益を得ることができることから、DeFiプラットフォームとして利用が拡大しました。ステーキングとは、対象の暗号通貨を保有してブロックチェーンのネットワークに参加することで、対価として継続的に報酬が貰える仕組みです。
また、ETHは発行上限枚数が定められておらず、毎年一定の数で生成され続けることは、【徹底解説】イーサリアム(Ethereum)でご紹介しましたが、BNBは新しく発行されることはなく、むしろ、バイナンス側が定期的にBNBをバーンすることから、BNBの流通枚数は減少していきます。
さらに、BSCは、他のブロックチェーンとインターオペラビリティが可能な点が特徴としてあります。
インターオペラビリティとは、相互運用可能性(inter-operability)のことで、ブロックチェーン同士を接続させて、情報をやりとりできることです。
BSCがローンチされる前からバイナンスチェーンは存在しました。そこには、ビットコインやイーサリアムと価格が連動するステーブルコインがありました。
ステーブルコインとは、価格変動が無い、価格が一定の通貨のことです。
BSCは、バイナンスチェーンのトークンとスワップすることができ、リップル(XRP)などのスマートコントラクトが無い通貨でもDeFiで利用することができるようになりました。
BSCを代表するDEX、PancakeSwap(パンケーキスワップ)
BSCが提供する柔軟性によって、別々のブロックチェーン上の資産をDeFiで使うことができるようになりました。
例えば、PancakeSwap(パンケーキスワップ)は、BEP20トークンを交換するためのDEXです。イーサリアムのトークンの規格がERC20であるのに対して、BSCのトークンの規格はBEP20です。
前述したUniswapがイーサリアム上のDEXであるのに対して、PancakeSwapはBSC上のDEXです。
BSCのインターオペラビリティと、PancakeSwapによって、ユーザーは異なるブロックチェーン上の資産を交換することができるようになりました。
PancakeSwapにも、Uniswapと同様の流動性プールがあり、UniswapがETHを対とするのに対し、PnacakeSwapではBNBがETHの代わりとなります。
PancakeSwapに流動性を提供するとLPトークンを獲得することができます。
PancakeSwapのユーザーは、取引時に0.2%の取引手数料を支払いますが、その内0.17%が、プールのシェアに応じて流動性提供者に支払われます。
また、LPトークンをPancakeSwapに預けるとCAKEというトークンが報酬として得られます。
CAKEは他の暗号通貨に交換することも可能ですし、CAKEをステーキングしてさらに報酬を得ることも可能です。
CAKEの価値高騰に伴い通貨ペアとなるBNBが大量にロックアップされ、BNBの価格高騰につながっています。
一方で、CAKEの価値は上昇しているものの、ブロックごとに25個のCAKEが新規発行され、CAKEトークンには発行上限がありません。
新規発行されるCAKEの数量を40個から25個に減らしたり、一定のCAKEを定期的にバーン(永久に使えないようにして市場への供給量を減らすこと)したりしていますが、発行上限が無いことから、この先価格がどのように変動するか分かりません。
Cosmos(ATOM)
独自ネットワークでインターオペラビリティ(相互運用性)の実現を目指すCosmosとは
前述のBSCで、「インターオペラビリティ」という言葉が出てきました。インターオペラビリティとは相互運用性を表す言葉です。
相互運用性とは、異なるブロックチェーンを接続して情報を交換できることで、例えば、イーサリアム(ETH)とリップル(XRP)を交換することです。
バイナンススマートチェーンでは、ステーブルコインを用いてインターオペラビリティを実現しました。
一方で、Cosmosでは、IBC(Inter Blockchain Communication)と呼ばれるプロトコルを用いて、複数のブロックチェーンがCosmosのネットワーク上でHubでつながることで、異なるブロックチェーン間の情報交換を可能にすることを目標にしています。
このIBCプロトコルの通信で中継役となるブロックチェーンがCosmos Hubです。そして、ATOMはこのブロックチェーンのネイティブトークンです。
Cosmos Hubは、DPoS(Delegated Ploof of Stake)というコンセンサスアルゴリズムが採用されています。
DPoSは、ATOMトークンの保有者に対して、トークンの保有量に応じた投票権を割り当て、その投票により取引の承認者を委任します。
取引を承認するまでの流れには多くのトークン保有者が関わっていますが、実際に取引をするのは投票で選出されたごく少数の承認者のみです。
前回記事でご紹介した、イーサリアムで採用される予定のPoSと比較すると、PoSはトークンの保有量が多いほど優位になりやすいですが、DPoSはトークン保有者が承認者を投票で選出するため、より民主主義的な仕組みと言われます。
このような、Cosmosのネットワーク上で、他の様々なブロックチェーンは、IBCプロトコルの通信を行うことで、異なるブロックチェーン同士の情報交換が可能となり、インターオペラビリティが実現されます。
Cosmosでは、IBCプロトコルの通信を用いて、異なるブロックチェーン上にあるトークン同士を取引所などの第三者を経由せずに直接交換するだけでなく、異なるブロックチェーン同士のスマートコントラクトが実現できるようになる等、様々なクロスチェーンアプリケーションの構築に使用できるようになります。
Polkadot(DOT)
Polkadotとは
Polkadotは、前述したCosmosのようにインターオペラビリティの実現を目標としているブロックチェーンです。
Cosmosでは、通信の中継役となるCosmos Hubがありましたが、Polkadotではリレーチェーン(Relaychain)というブロックチェーンがあります。
また、アプリケーションごとに構築される個別のブロックチェーンとして、パラチェーン(Parachain)があります。
Polkadotでは、パラチェーンはリレーチェーンに接続され、各パラチェーンのブロックがリレーチェーンへ送られて検証された後承認されます。
また、例えば、Polkadotとイーサリアム間で情報交換する際には、ブリッジチェーンという特別なパラチェーンが用いられます。
PolkadotのコンセンサスアルゴリズムNPoS(Nominated Proof of Stake)
PolkadotではNPoS(Nominated Proof of Stake)というコンセンサスアルゴリズムを利用しています。
Polkadotには、Validator、Nominator、Collator、Fishermanの4つの役割が存在します。
各パラチェーン内のCollatorがチェーン内のトランザクションをブロックに積めてValidatorに送ります。Collatorは、自分が送ったブロックが検証され、リレーチェーンに追加されると報酬が貰えます。
Validatorは、Collatorから送られてきたブロックを検証して承認します。Validatorになるためは、Validator志望者の中から選出される必要があり、ValidatorはネイティブトークンであるDOTをStake(担保としてロック)することで、ブロックを検証して報酬を受け取ることができますが、リレーチェーンのブロックに常にオンラインである必要があります。
Nominatorは信頼できるValidatorのリストを公開することで、そのValidatorをサポートすることができます。NominatorになるにはValidatorと同じようにDOTをStakeする必要があります。もしサポートしているValidatorが選出されたら、Nominatorは報酬の一部を受け取ります。Validatorの人気があると貰える報酬が減るので、Validatorは偏りなくサポートされるというインセンティブが働きます。
Fishermanは、Validatorの行為を監視する役割で、プロトコルに違反する行為を見つけたら通報し、そのValidatorのStakeを一部または全額貰えます。Validatorは繰り返しオフラインになっているところを見つかったりすると処罰として報酬を減らされたり、Stakeを没収されます。
NPoSでは、ValidatorとNominatorのStakeの合計が多い人がValidatorプールとして選ばれます。この仕組みにより大量にDOTを保有している人単体へのシステム依存を回避することができ、DOTを保有する全員が参加できることから、悪意を持つ人がValidatorになることを困難にしています。
PolkadotとCosmosの比較
Cosmosでは異なるチェーンへと転送されるデータは、トークンに限られていますが、Polkadotはあらゆる種類のデータを転送可能です。
また、Cosmosでは各ブロックチェーンのセキュリティが個別のチェーンに委ねられているため、異なるチェーンにトークンを転送する場合には、転送先のチェーンのセキュリティが十分に強固である必要があります。一方で、Polkadotでは、すべてのパラチェーンが、リレーチェーンのセキュリティを享受できます。そのため、パラチェーンの開発者はセキュリティを木にすること無く、開発を行うことができますが、リレーチェーンに障害や脆弱性が生じた場合は、全てのパラチェーンに影響が及ぶリスクがあります。
また、Polkadotは、個々のパラチェーン上でプログラムを実行するためリレーチェーンにはスマートコントラクトの機能はありませんが、Cosmos同様に、パラチェーンを利用して複数のブロックチェーン同士のスマートコントラクトを構築したり、イーサリアム等のスマートコントラクトの拡張手段として使用できます。
PolkadotのDapps
この記事を執筆している時点で、Polkadotの時価総額は、CoinMarketCapのランキングで5位となっており、世界から注目を集めています。
Polkadotを利用したDappsとしては以下のようなものがあります。
まだまだ開発中のものが多く、これからではありますが、今後の動向が気になるところです。
Polkaswap
Polkaswapは、ソラミツ株式会社が主導して現在開発中のプロジェクトで、SORAネットワークを介してPolkadotネットワーク上に構築されたDEXで、Polkadot上のUniswapと言われています。
イーサリアムで問題になった高い取引手数料を負担することなく、他のブロックチェーン上にある場合でも高速な取引を促進することを目的としています。
SORAネットワークは、Polkadotのパラチェーンネットワークで、取引手数料はSORAのネイティブトークンであるXORを利用します。
PolkaswapのネイティブトークンはPSWAPで、流動性ステーキングに使用し、流動性提供者は報酬としてPSWAPを獲得します。
取引手数料はXORトークンで支払われますが、PSWAPトークンの買い戻しに使用されます。買い戻されたPSWAPトークンの一部が流動性提供者に支払われ、また残りはバーンします。
Reef
ReefはPolkadot上に構築された最初のクロスチェーンDeFiオペレーティングシステムで、100%EVM互換となっています。そのため、開発者は既存のイーサリアムで構築したDappsをReefにシームレスに移植できます。2021年の第2四半期に、クロスチェーン流動性ブリッジの立ち上げが予定されています。
Reefは、イーサリアムと比較して100倍高いスループットとスケーラビリティを提供し、トランザクションコストは100分の1になります。
Acala
Acalaは、Polkadot上でDeFiサービスを提供することを計画するプロジェクトで、こちらもEVM互換となっています。
Acalaの中心となるプロダクトは、Acala Dollar(aUSD)というステーブルコイン、Acala DEXというAMM型の分散型取引所、暗号通貨DOTのステーキングサービス、dSWFという分散型のファンドがあります。まだPolkadotに接続されていませんが、コインベースから出資を受け、現在開発が進められています。
ANCHOR
Anchorは、Cosmos、Polkadot、Terraの3社が2020年7月に発表したDeFiレンディングプロトコルで、PoSのステークキング報酬を利用してTerra(ステーブルコイン)の利回りを提供する、Terraブロックチェーンに構築される新しいDeFi貯蓄商品です。
Anchorは、世界経済の成長に合わせた安定した通貨を開発することを目標にしています。他の流動性の高い主要なPoSブロックチェーンのステーキング資産を担保にして、借り手に預金を貸し出し、ステーキング報酬を収益として取得します。
預金はロックアップがなく即座に引き出すことが可能で、担保を清算するプロトコルを実装して預金者の元本を保護することや、担保資産から預金者にステーキング報酬の可変部分を渡すことによって預金金利を安定化させることを計画しています。
Enjin
Efinity:Polkadotを用いたNFTブロックチェーン
NFT特化型プラットフォームのEnjinは、Polkadotを用いた次世代型NFTブロックチェーンEfinityの開発を発表しています。
Efinityでは、Efinity Token(EFI)が使用される予定で、EFI保有者は、コミュニティの運営に投票したり、Enjinエコシステム内で利用されているEnjin Coin(ENJ)をEfinityにステーキングすることで報酬として付与される予定です。
Efinityではnft.ioというNFTマーケットプレイスが稼働予定です。NFT.ioでの入札者にEFIを提供することにより、資産の流動性を向上させ、コレクターが所有しているNFTへの評価が可視化されると考えられています。
この記事を執筆している時点ではまだリリースされていませんが、2021年内のリリースを予定しています。
Solana(SOL)とDeFi
このように、イーサリアムから始まったDeFiは世界で注目され、イーサリアムで問題となっている取引手数料の高騰や取引速度の向上を目的として様々なブロックチェーンが登場し、また、異なるブロックチェーン間の取引ができるように開発が進められています。
イーサリアム2.0プロジェクトが計画されていますが、どの程度取引手数料の削減や取引速度の向上が可能であるかは現状不明で、実装されるのもまだ少し先になりそうです。また、CosmosやPolkadotについても、現時点ではまだDeFiの実用段階には至っていません。そんな中、Solanaでは、暗号通貨取引所であるFTXが開発したDEXのSerumを中心にエコシステムが拡大しており、注目を集めています。
SolanaとDeFi
Solanaは高速かつ低コストで取引が可能なブロックチェーンとして開発されました。
ビットコインやイーサリアム、Cosmos等のコンセンサスアルゴリズムであるPoWやPoSといったコンセンサスアルゴリズムは秒間数十〜千程度のトランザクション性能が限界ですが、SolanaではPoH(Proof of History)というコンセンサスアルゴリズムを採用しており、なんと秒間5万以上のトランザクション性能があります。
VISAの処理能力が最大秒間5万6千トランザクションと言われていますので十分実用的な性能と言えます。また、ファイナリティは1秒以内に得ることができます。
Solanaがなぜトランザクション性能を桁違いに向上させることが出来ている理由は、SolanaのコンセンサスアルゴリズムであるPoHにあります。
これまでのブロックチェーンでは、ブロック生成において、新しいブロックをチェーンに繋げる前にそのブロックを確認するプロセスがありましたが、この時の通信がボトルネックになっていました。一方で、Solanaではノード同士が通信をせずにトランザクションを承認できる仕組みになっています。
PoH(Proof of History)とは
PoHでは、各ノードがある時点にブロードキャストされたトランザクションを全てSHAのハッシュにしてタイムスタンプを発行します。
ノード?ブロードキャスト?タイムスタンプ?という方は、是非【ブロックチェーン技術】ビットコインとイーサリアムの基礎知識を先にご覧ください。
このタイムスタンプが、そのブロックのトランザクションをこの時間に承認したという証明になり、これを各バリデータがオンラインで公開します。
そのため、各ブロックチェーンのノード同士が通信を行うことなくブロックを承認することができ、通信時間がボトルネックにならず、バリデータのノードのコンピュータ性能のみが速度に影響するため、飛躍的なトランザクション速度を実現しています。
Solanaのインターオペラビリティ、Wormholeとは
Solanaでは、Wormholeと呼ばれる仕組みで他のブロックチェーンをSolana上で取引できるようにしています。
Wormholeの仕組みは、例えば、イーサリアムのERC20トークンをsolana上で取引する場合、ユーザーが保有するERC20トークンをイーサリアムブロックチェーン上でBridgeコントラクトにロックし、ユーザーがロックしたERC20トークンをバリデータが確認し、WormholeコントラクトがSPLトークンをSolanaブロックチェーン上に発行します。反対に、SPLトークンをERC20トークンに変換する場合は、ユーザーがWormholeコントラクトにSPLトークンの償還を支持し、バリデータが確認後イーサリアム上のBrigeコントラクトに伝達し、ロックされていたERC20トークンがユーザーのウォレットに反映されます。
この仕組は、ERC20トークンをBinanceに送るとBSCトークンとして引き出すことができる仕組みと同じです。
Solanaのエコシステム
Solanaが注目されているのは、高性能なブロックチェーンというだけではなく、FTXが背後につくSerumプロジェクトや、ステーブルコインUSDT(テザー)、分散型ステーブルコインTerra、分散型オラクルChainlinkとの提携等様々なDeFiエコシステムを構築を計画していることがあります。
例えば、暗号通貨取引所のFTXが開発したDEXのSerumは、Solanaをベースに開発されており、既にリリースされています。
ユーザーとしては、高速かつ低コストで取引できる分散型取引所を利用できることはメリットです。筆者も実際に取引をしてみましたが、注文から取引完了まで1秒もかからず、手数料も数十円程度で気にならず、感動しました。
Serum
FTX主導で開発されたSolana上のDEXで、高速で安価なだけではなく、板取引方式とAMM方式の両方をサポートしています。
ユーザーは、板取引方式によるTradeや、AMM方式のSwapを行うことができますが、更に、Serumを利用してフロントエンドをホストすることも可能です。
取引手数料は0.3%で、その内0.25%が流動性提供者に、0.04%はSerumのトークンであるSRMのバーンに、残りの0.01%はserumnのフロントエンド運営者に配布されます。
Bonfida
Serumを利用したフロントエンドは複数ありますが、代表的なものにBonfidaがあります。
Bonfidaはユーザーにとって易しいインターフェースを作り、誰もがブロックチェーン上のサービスにアクセスできるようにすることを目標としています。
Bonfidaは、取引チャートやマーケットオーダー、Serum関連のTradingViewデータを提供しており、また、Serumのブロックチェーン上で発生したトランザクションに関連するデータをREST APIにより提供しています。
Raydium
Raydiumは、Solana上に構築されたAMM型のDEXで、Solana上のUniswap的な位置づけのサービスです。
Raydiumが特徴的なのは、Solana上で構築されているため高速かつ低コストなのはもちろん、Raydiumに提供された流動性がserumにも提供されるという点です。
例えば、イーサリアムには、UniswapとSushiswapのようにAMM型のDEXが複数ありますが、Uniswap上で提供された流動性をSushiswap上で利用することができません。つまり、Uniswapに預けた暗号通貨は、Sushiswapで取引を行う際には利用できず、SushiswapはSushiswapで流動性が提供されなければならないということです。
Raydiumでは、Raydiumに提供された流動性が、Serumに融通されるため、Raydiumの流動性がSerumで利用されることになります。また、ユーザー視点では、Raydiumを使ってSerumのオーダーブックから取引する形で指値注文ができます。
さらに、現在SushiswapでBonsai(Codename BONSAI!)というプロジェクトが提案されており、近い将来、Sushiswapの流動性がRaydiumに提供される可能性があります。
これは、Serumを開発した暗号通貨取引所FTXのCEOがSushiswapのステークホルダーでもあるため、FTXが開発したSerumに流動性を呼び込むための戦略の一つとなっています。
Raydiumには、Fusion Poolsというサービスがあります。
Fusion Poolsは、Raydiumとパートナーシップを結んだプロジェクトのトークンとRaydiumのトークンRAYをセットで流動性提供することで、Dual Yieldという形で二重で報酬を得られる仕組みです。具体的には、前述したBonfidaのトークンFIDAとRAYをセットでRaydiumのFusion Poolsに預けると、FIDAが年間205%、RAYが年間60%の年間合計265%の報酬(2021年4月4日現在)が得られるという仕組みです。
この記事を執筆している時点では、FIDA、OXY、MAPS、KIN、COPEという5つのセットしかありませんが、SushiswapがRaydiumのパートナーとなると、ここにSUSHIが追加される可能性があり、Raydiumに提供された流動性はSerumに融通されるという巧妙な戦略になっています。
Raydiumは、Serumに流動性を呼び込むための重要な位置づけになっていると考えられますが、RaydiumとSerumの間で手数料報酬等がどのようになっているのか不透明な側面もあります。
とはいえ、Raydiumはこのような形で今後も流動性を呼び込む戦略を取ったり、特定のトークンを後援するためにFusionPoolsに追加することが考えられ、流動性提供者はFusionPoolsに流動性を提供するためにRAYが必要となり、報酬として受け取ったRAYは更に単体でステーキングすることができることから、RAYの需要も高まっていくことが考えられます。
ユーザーとしても、高速かつ低コストで取引が可能となるメリットは大きく、イーサリアム2.0プロジェクトが実現したり、Polkadot等で新たなDeFiが構築されるまでの間にSolanaをベースにしたSerumのエコシステムが急速に拡大する可能性もあると考えられます。
まとめ
以上、今回は、イーサリアムから始まったスマートコントラクトの動向について解説しました。
今回の記事の内容がよく分からなかったという方は、是非下記の記事もご覧ください。
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