会社を経営する上でのマーケティング戦略の全体像

会社を経営する上でのマーケティング戦略の全体像
本記事のテーマ
この記事は、マーケティング戦略を俯瞰してまとめたものです。
これから起業を考えている方やスタートアップを目指す方の参考になれば幸いです。
はじめに、マーケティングを学ぶ目的
筆者の個人的な話になってしまうのですが、このブログは、起業してスタートアップを実践している中で学んだ知識・経験を共有することを目的に作っていますが、もう一つの目的は、マーケティングを学ぶことです。
ブログを運営するということは、マーケティングリサーチをして、ターゲットを選定し、そのターゲットのニーズを把握してキーワードを選定し、ターゲットのニーズに応えるコンテンツを制作する(記事を書く)ことだと思っているので、まさにマーケティングを学びながら実践するのに丁度良いと思い、ブログを書き始めました。
筆者自身がそうだったのですが、起業した時にマーケティングの知識といえば、公認会計士試験の経営学で学んだ程度の知識(経営学で出てくる程度の基礎的な知識で、PEST分析、SWOT分析、STP、4Pという言葉を聞いたことがあるくらいの知識)しかなく、マーケティングを実践したことはありませんでした。
しかも、学んでから5年以上経過しており、ほとんど忘れてしまっていたことから、今の会社では基礎から学びなおして、実践しています。
この辺の経験については、今後このブログを通して共有させて頂く予定なのですが、今回はマーケティングカテゴリーの1回目の記事ということで、マーケティングの基本的な全体像を解説したいと思います。
マーケティング戦略の全体像
経営戦略とマーケティング戦略の関係
突然ですが、株式会社の目的は、企業価値の最大化です。
企業価値を最大化するためには、利益を最大化する必要があります。
利益を最大化するには、売上を増加させるか、費用を削減する必要があります。
経営戦略とは、売上を増加させる、または、費用を削減するために、経営資源(ヒト、モノ、カネ等)を配分するための戦略のことです。
そして、経営戦略には、全社戦略と個別戦略があります。
全社戦略は、どの事業領域で戦い、どのような事業の組み合わせを持ち、それらの事業の間でどのように資源配分するかを決定することです。
個別戦略は、事業戦略と機能戦略があります。
機能戦略は、全社にまたがる機能別の戦略で、人事、財務、R&Dなどがあります。
そして、事業戦略は、特定の製品をある競争環境下で事業展開する際の戦略のことです。
この事業戦略のほとんどを占めるのが、マーケティング戦略だと言われることがあります。
それは、マーケティングが、商品やサービスが大量かつ効率的に売れるように、市場調査してから販売を行うまでの全過程にわたって行う企業活動だからです。
マーケティング戦略の全体像
前置きが長くなってしまいましたが、本題のマーケティング全体像について解説します。
マーケティングには、大きな流れがあります。
まず、市場機会を発見するために3C(Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社))、PEST(political(政治・法律)、economic (経済)、social(社会)、technological(技術))、SWOT(Strengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威))等を分析します。
次に、STP分析により、市場を細分化して、ターゲットを特定(誰に販売するかを決定)し、競合と比較して自社がどうなのかポジショニングを把握します。
そして、マーケティングミックスである4P(Product(製品・商品)、Price(価格)、Promotion(プロモーション)、Place(流通))を検討して、何をいくらでどうやって売るのか決定します。
これらのマーケティング戦略を計画・実行するためにマーケティングリサーチを行います。マーケティングリサーチは、マーケティング活動の基盤となります。
なお、競合との競争に勝つためにブランディング戦略を策定したり、効率的に販売につなげるためにCRM(Customer Relationship Management(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント))で顧客管理を行うことも重要です。
つまり、市場機会を明らかにして、マーケティングの課題を設定し、それぞれのマーケティング活動によって課題を解決していく流れをマーケティング戦略といいます。
このように、マーケティング戦略には大きな流れがあります。
マーケティング戦略を検討する際にはこのような流れを意識することが重要です。
それぞれのマーケティング活動について
それでは、それぞれのマーケティング活動について簡単に紹介します。
詳細はまた別の機会でそれぞれ記事にして随時追加していきたいと考えています。
マーケティングリサーチ
マーケティングリサーチは、マーケティング活動の基盤となります。
以下でそれぞれのマーケティング活動を紹介しますが、マーケティングリサーチは全てのマーケティング活動において必要になります。
マーケティングリサーチとは、課題を明確にして、課題解決のアクションや意思決定のために必要な情報収集や分析を行うことです。
市場機会の発見フェーズにおいては、市場規模、各企業の戦略、既存商品・サービスの詳細(売上規模・価格・販売チャネル・プロモーション内容等)、顧客ニーズ等について、必要に応じて調査を行います。
リサーチ範囲を明確にするために、3C分析・SWOT分析・STP分析・マーケティングミックス(4P・4C)などのフレームワークを活用することが多いです。
リサーチ範囲が決まったら、デスクリサーチ(Web、新聞、雑誌等の出版物)、インターネットや紙でのリサーチ(アンケート等)、インタビューや訪問による調査、ログデータ分析、観察等によってデータを収集します。
データが収集できたら、項目や時系列等で分析して具体的なアクションにつなげます。
詳細については、下記の関連する記事をご参照下さい。
スタートアップで実践するマーケティングリサーチの全て
市場機会を発見する(3C分析、PEST分析、SWOT分析)
マーケティング戦略の立案にあたって、まずは市場機会を発見します。
市場機会を発見するためには、環境分析により環境を理解するが必要です。
環境には、外部環境と内部環境があります。
外部環境とは、企業を取り巻く外部環境、顧客、競合等のことです。
内部環境とは、自社でコントロール可能な経営資源(経営戦略や企業文化、製品、市場シェア、マーケティング戦略、人、資金等)のことです。
そして、これらの環境を分析するためのフレームワークとして、3C(Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社))分析、PEST(political(政治・法律)、economic (経済)、social(社会)、technological(技術))分析、SWOT(Strengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威))分析等があります。
これらの分析によって理解した内容をもとに、市場機会を明確にします。
そして、市場機会が明らかになったら、マーケティングの課題を設定して、下記のマーケティング活動によって課題を解決していきます。その一連の流れをマーケティング戦略といいます。
詳細については、以下の関連する記事をご参照下さい。
市場機会を発見する(3C分析、PEST分析、SWOT分析)
STP分析
STP分析とは
STP分析とは、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)の頭文字を取って名付けられた分析方法です。
前述したように市場機会を発見したら、効果的なアプローチを取るためにセグメンテーションとターゲティングを行います。市場を意味のある母集団に分けて(セグメンテーション)、その中からターゲットとする市場を選択(ターゲティング)します。
そして、ターゲット顧客に、自社のプロダクトをどう認知させるかを決定(ポジショニング)します。
これによって、競合他社や市場での自社の立ち位置が明確になるため、自社の弱みは何か、何を強みにしてどのように戦えば良いのかが可視化されます。
それでは、以下具体的に見ていきます。
セグメンテーション(Segmentation)
セグメンテーションとは、市場を小さな集団に区分することです。
これは、全ての人のニーズに応えるプロダクトを販売しようとすると、コンセプトが曖昧になったり、非現実的な価格になってしまい、また、1人のためにプロダクトを開発するには通常採算が合わないことから、マーケティング上、同質として考えられる集団に区分することが目的です。
区分するためには、通常、顧客の属性や購買行動等のパターンによって、いくつかの共通項を持つグループに分けます。このとき参考になる切り口としては、以下のようなものがあります。
- 地理的変数(地方、気候、人口密度)
- 人口動態変数(年齢、性別、家族構成、所得、職業)
- 心理的変数(ライフスタイル、パーソナリティ)
- 行動変数(求めているもの、使用率)
ターゲティング(Targeting)
ターゲティングとは、セグメンテーションで区分した集団の内、自社が狙う顧客層を明確にすることです。
市場全体をターゲットにするのか、特定のセグメントに集中するのか等のアプローチを決定します。
市場を選定する際に考慮する要素としては、例えば以下のようなものがあります。
- 規模が大きく成長性のある市場を選定する
- 自社が優位な市場を選定する
- 競合はどのようなマーケティング戦略を行っているか
- 政府や社会団体からの干渉はどの程度あるか
ポジショニング(Positioning)
ポジショニングとは、ターゲット顧客に自社のプロダクトをどう認知させるかを決定することです。
ポジショニングの方法は大きく2通りあります。
よくやるのが、縦軸と横軸の2軸で自社と競合をマッピングする方法です。
潜在的・顕在的なニーズを軸にして、競合と差別化するようにマッピングするのが基本です。
マーケティングミックス(4P・4C)の検討
STPでターゲットやポジションが把握できたら、今度は何をいくらでどのように販売するのかを検討します。
何をいくらでどのように販売するかを検討するために、マーケティングミックス(4P・4C)を検討します。
4Pとは、製品(Product)、価格(Price)、プロモーション(Promotion)、チャネル(Place)のことです。
まず、製品(Product)について、ターゲット顧客のニーズに応える商品・製品やサービスは何なのか、ターゲット顧客のニーズに応えるためには、商品・製品やサービスはどのようなモノにすれば良いかを検討します。
次に、価格(Price)について、その商品・製品やサービスを、いくらでターゲット顧客に提供すれば良いかを検討します。売上は、単価×数量で計算されるのですが、売上が最大化される価格を調査することが必要です。
そして、プロモーション(Promotion)について、自社の商品・製品やサービスをどのように顧客に宣伝すれば顧客の購買につながるのかを検討します。
また、チャネル(Place)について、顧客はどのような流通経路で商品・製品やサービスを手に入れたいのかを検討します。
これら4Pは企業側の視点ですが、顧客側の視点で分析しようとするフレームワークを4Cと言います。
4P | 4C | 関連する記事 |
---|---|---|
製品(Product) | 価値(Customer Value) |
スタートアップを実践して学んだ仮説検証の方法 スタートアップの開発において注意すべきこと スタートアップの各ステージ(Seed〜SeriesC)において注意すべきこと スタートアップで実践するグロースハックの方法 |
価格(Price) | コスト(Cost) | 会社経営する上での価格戦略(プライシング)の全体像 |
プロモーション(Promotion) | コミュニケーション(Communication) | 会社経営する上でのプロモーション戦略(コミュニケーション戦略)の全体像 |
チャネル(Place) | 利便性(Convenience) | チャネル戦略とは?O2O、オムニチャネル、OMOの違いについて |
ブランディング
ブランドとは、自社の商品・製品やサービスを顧客に想起してもらう重要な要素です。
ブランドを構築し、伝える活動全般をブランディングといいます。
冒頭で、株式会社の目的は企業価値の最大化で、売上を増加させるか、費用を削減するかという話をしましたが、ブランディング活動によって適切なブランドを築き上げることは、売上増加と費用削減につながります。
つまり、ブランドイメージが良いと、販売価格の向上や販売量の増加につながるので、結果的に売上が増加します。
また、ブランドイメージが良いと、広告宣伝を積極的に行わずとも顧客自らその商品・製品やサービスを手に入れたいと思うようになるので、結果的に広告宣伝費用が削減できます。
CRM(Customer Relationship Management)
CRMは、顧客との関係を構築・管理するマネジメント手法のことです。
バブルの頃と違って、現在では高品質・低価格な製品・サービスを投入しても顧客を獲得するのが難しい時代になっており、大衆に向けた商品・製品やサービスから、個人のニーズ個別に対応する商品・製品やサービスも増加しています。また、ほとんどの人がインターネットと繋がり、スマートフォンの普及等によって顧客の行動がデータとして蓄積できるようになっています。
CRMは、多様化する顧客ニーズを把握し、個別課題へのきめ細かい対応をすることで、良好な関係を長期的に維持・強化していくマーケティング施策であり、データを集めて詳細な顧客情報を可視化し、1人の顧客に的確にアプローチを行うことで、効果的かつ効率的に商品・製品やサービスを提供しようというものです。
なお、関連する記事として、以下の記事がありますので、是非ご参考にして下さい。
デジタルマーケティングでカスタマージャーニーをハックする
まとめ
以上、今回は、マーケティング戦略について紹介しました。
これから起業を考えている方やスタートアップを目指す方の参考になれば幸いです。
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