スタートアップの初期で実践した、リスティング広告で顧客を獲得しCPAを8分の1以下に改善した方法

スタートアップの初期で実践した、リスティング広告で顧客を獲得しCPAを8分の1以下に改善した方法

スタートアップの初期で実践した、リスティング広告で顧客を獲得しCPAを8分の1以下に改善した方法

本記事のテーマ

これまで、マーケティングの基礎知識や全体像を記事に記載してきましたが、今回はスタートアップのSeedからSeriesAにかけて実践したリスティング広告の運用ノウハウと、CPAを8分の1に削減した施策をご紹介します。リスティング広告の運用を実践する方の参考になれば幸いです。

はじめに

リスティング広告とは

マーケティングは、商品やサービスが大量かつ効率的に売れるように、市場調査してから販売を行うまでの全過程にわたって行う企業活動です。
リスティング広告の目的は、ターゲット顧客を獲得することです。
特定の検索ワードで検索を行なったユーザーに対して広告を表示することで、ターゲット顧客に自社のサービスを認知してもらい、自社のサービスを利用してもらうための手段です。

スタートアップのマーケティング

スタートアップや新規事業においては、マーケティングはビジネスアイデアの検証から始まります。
スタートアップの各ステージ(Seed〜SeriesC)において注意すべきこと
スタートアップを実践して学んだ仮説検証の方法
これらの記事でご紹介してきたように、まずは、ビジネスアイデアが本当に顧客の課題にマッチしたソリューションを提供するものであるかを徹底的に検証します。
会社を経営する上でのマーケティング戦略の全体像でご紹介したように、マーケティングには大きな流れがあり、これらをゼロから検証していきます。

本記事では

この記事のテーマはリスティング広告の運用ですが、特に、CPF(ペルソナは本当に課題を抱えているか、それはどの程度の課題か)やPSF(ペルソナの課題を解決するソリューションはどのようなものか)を検証し顧客を獲得するまでに、筆者がスタートアップでどのようにリスティング広告を運用したかを中心にご紹介します。

ビジネスアイデアの検証

検索キーワードの調査

ビジネスアイデアの検証方法は様々あると思いますが、筆者はまず、想定したペルソナに対してアンケートを実施したり、直接話を聞いて、ペルソナに対しての理解を深めました。その際には、カスタマージャーニーマップを活用して、ペルソナがどのタイミングでどのような悩みを抱えているか、また、ペルソナは現状抱えている悩みをどのように解決しているかを洗い出しました。
すると、多くのペルソナが特定のタイミングでインターネット検索を行うことが判明しました。
そこで、Googleのキーワードプランナーの検索ボリュームを調査して、ペルソナがどのようなキーワードで検索を行うかを調査しました。
その結果、キーワード自体にある程度の検索ボリュームがあり、かつ、そのキーワードで検索するユーザーは、自社サービスのペルソナと一致すると想定されるキーワードを発見しました。
ここで、この発見したキーワードでリスティング広告を実施すれば、ターゲット顧客を獲得できるのではないかという仮説を立てました。

テストマーケティング

このタイミングで、テストマーケティングを実施するために最初のリスティング広告を出稿しました。
テストマーケティングの目的は、想定したキーワードで顧客を獲得できるか、また、獲得できた場合には、実際に顧客に初期のサービスを利用してもらい意見や感想を聞くことでした。
と言っても、このタイミングではペルソナの課題を解決するソリューションの開発には着手していなかったので、「2ヶ月後にリリース予定のサービスの事前登録をして頂いた方は利用料無料」という形でリスティング広告を出稿しました。
Googleのリスティング広告を利用しましたが、このタイミングでは細かい設定などは行わず、広告に出稿するLP(ランディングページ)も、SaaSを利用してコードを書かずに2時間〜3時間程度で作成したものを使いました。

初期の検証段階では予算はあまりかけられないので、1日の上限予算を2万円に設定しました。
この結果、リスティング広告の予算は毎日上限まで消化して、10日間で10名程の申し込みがありました。
CPA(顧客獲得コスト)は2万円程度になりましたが、CPA2万円が適切なのかというのは、顧客1人あたりのLTVによって左右されます。
ですが、以下の理由から、このタイミングではCPAの検討は一旦保留しました。

  • そもそもペルソナは本当に課題を抱えているのか確認すること
  • その課題を解決するソリューションとはどういう形なのか検証すること
  • あくまで想定顧客を獲得してサービスを使ってもらうことが目的であること
  • サービスの利用料はいくらが妥当であるかの検証は別途行う予定であったこと(サービスの利用料は無料にしてアップセルでのマネタイズを狙うか、サービス利用料自体を有料にするかの結論が出ていなかったこと)

初期ユーザーへのヒアリング

こうして獲得した初期ユーザーに、2ヶ月で開発したMVPを利用してもらいました。
スタートアップを実践して学んだ仮説検証の方法をご覧下さい。
利用してもらった後に、電話や対面で意見や感想を伺ったところ、確かに想定したペルソナは想定した課題を抱えており、課題を解決するソリューションの方向性がある程度正しいということが分かりました。
もちろん、初期ユーザーに利用してもらったのはMVPなので、プロダクトの改善はまだまだ必要でしたが、プロダクトの方向性が間違っていないことが判明しました。
また、有料でも利用するとの意見が多かったため、有料で本格的にリスティング広告の運用を開始することにしました。

リスティング広告で顧客を獲得するまでに実施したこと

初期のリスティング広告

初期のリスティング広告は、サービス利用料は10万円に設定し、利用料を無料にして行なったテストマーケティングと同様に、Google広告で2〜3時間で簡単に作成したLPを出稿しました。
この時のリスティング広告の運用結果は以下のような状況でした。

時期 Imp数 Click数 CTR 費用 CPC CV数 CVR CPA
初期 12,558 201 1.60% ¥130,995 ¥652 2 1.00% ¥65,498

この数字だけ見ると、お世辞にも良い数字が出ているとは言い難いですが、この時、筆者は初期ユーザーからの感想や意見が好感触だったこともあり、有料でも必ず顧客を獲得できると信じていました。そのため、サービスを有料にするか無料にするかは、しばらく改善を行なってから判斷することにしました。
ここからが、ようやく本記事のテーマでもある、スタートアップでどのようにリスティング広告の運用を行なったかという話になります。

リスティング広告の運用結果を踏まえた仮説と改善案

当初の運用結果を踏まえた仮説

まず、筆者は、初期のリスティング広告の結果を見て、以下の仮説を立てました。

  • ペルソナの中でも有料でサービスを利用してくれるような優良顧客とその他の顧客は訴求ポイントが異なるのではないか
  • BtoCのサービス利用料としては高額なので、申込みまでに検討期間が必要なのではないか
  • 高額のサービスであるため、第一印象の信頼感が大事なのではないか
  • Google広告のキーワードやクリエイティブの最適化によりもっと費用削減余地があるのではないか

そこで、これらの仮説に対して、以下のアクションを実施しました。

ペルソナの中でも有料でサービスを利用してくれるような優良顧客とその他の顧客は訴求ポイントが異なるのではないか

これについては、ペルソナをより細分化して、有料でサービスを利用してくれる見込み顧客に的確にアプローチするため、Google広告のクリエイティブを復数パターン作成してA/Bテストを行い継続的に改善しました。
また、Google広告のレスポンシブ検索広告を積極的に活用しました。
さらに、キーワードを継続的に見直しました。特に、Google広告では推奨キーワードを提案してくれるため積極的に追加し、費用対効果の悪いキーワードは除外するといった作業を繰り返しました。

BtoCのサービス利用料としては高額なので、申込みまでに検討期間が必要なのではないか

これまでのLPでは、いきなりサービスの申込みにつなげる導線だったところ、事前相談という形でリードを獲得する導線に変更しました。
事前相談という形にすることで、顧客情報を獲得し、その後リードナーチャリングする方が登録数を伸ばせると見込んだからです。
また、Google広告のリマーケティングを活用して、一度LPに訪問してくれた方をターゲットにしてディスプレイ広告を表示することにしました。

高額のサービスであるため、第一印象の信頼感が大事なのではないか

2〜3時間で作ったLPでは、デザインに素人感が出てしまうことから、デザイナーにデザインを依頼して本格的にLPを制作することにしました。
その際に、何度もディスカッションを行なって、初期ユーザーのヒアリングで得た知見を基に、ペルソナの課題を解決するサービスであることを的確に訴求できるような構成にしました。また、コンテンツ量は多くなってしまうのですが、訪問者が疑問を抱くであろう項目はよくある質問というページを作って的確に伝えるようにしました。

Google広告のキーワードやクリエイティブの最適化によりもっと費用削減余地があるのではないか

Google広告には、様々な自動入札機能がありますが、「コンバージョン数の最大化」に設定しました。
これに関連して、LPの中のあらゆる場所に、事前相談フォームにスクロールするだけのボタンを設置し、そのボタンが押されたらコンバージョンとして計測できるようにしました。こうすることで、ボタンをクリックしてくれるような訪問者を効率的に集客できるように、Googleが自動的に最適化してくれるようになります。

リスティング広告の改善結果

上記の他にもまだ改善余地はありますが、これらのアクションの結果、リスティング広告の運用結果は以下のように改善しました。
初期、改善後ともに、Google広告の予算上限を設定しており、運用期間は7日間の比較です。

時期 Imp数 Click数 CTR 費用 CPC CV数 CVR CPA
初期 12,558 201 1.60% ¥130,995 ¥652 2 1.00% ¥65,498
改善後 144,379 2,502 1.73% ¥125,881 ¥50 43 1.72% ¥2,927

初期のCVはサービスの申込みの数で、改善後のCVは事前相談の数です。
改善後は、サービスの申込みではなくリード獲得を優先して、リードナーチャリングによりサービスの申し込みにつなげる施策に切り替えたため単純な比較は出来ないのですが、見込み顧客がサービスを利用してくれる割合は、当初から40%を超えていました。
つまり、改善後のサービスの申し込み数は最低でも17件獲得できており、CPAは7,404円と当初と比較して8分の1以下になっています。

まとめ

今回は、スタートアップの初期において実践したリスティング広告の運用ノウハウをご紹介しました。
実践した感想としては、以下の通りです。

  • Googleの最適化や自動入札などを利用することで劇的に結果が改善する
  • サービスの申込みよりもリード獲得に焦点を当てる(特に高額なサービス等)
  • LPの作り込みによって劇的に結果が改善する(特に高額なサービス等)

リードナーチャリングのノウハウや、リスティング広告以外のマーケティング手法についても次回以降でご紹介したいと思います。