スタートアップで実践するグロースハックの方法

スタートアップで実践するグロースハックの方法

スタートアップで実践するグロースハックの方法

本記事のテーマ

この記事は、グロースハックの全体像を記載したものです。
以前に、会社を経営する上でのマーケティング戦略の全体像という記事を書きましたが、その中で、今回は近年注目されているグロースハックの内容について記載したいと思います。

グロースハックとは

グロースハックとは

グロースハックとは、プロダクト自体に手を加えて、プロダクトの中に「生長する仕組み」を組み込んでビジネスの拡大を行っていく手法です。今までのマーケティングが4P(製品戦略(Product)、価格戦略(Price)、プロモーション戦略(Promotion)、流通戦略(Place))の内、Productを固定であるとして取り扱っていたのに対して、グロースハックではプロダクトに手を加えて施策を行います。

インターネット等を通じて提供するサービスは、ユーザーの行動をデータとして集計することが可能なため、ユーザー行動をデータで可視化して、サービスの改善につなげていきます。
ユーザーにどのような体験をしてもらうのか、どのような価値を感じてもらうのかを検討し、目標数値を設定し、その数値をどのように改善したいのかを明確に定義して、その結果を数値で判断できるようにします。

なお、継続率が低いサービスや収益につながらないサービスは、そもそもグロースハック以前の問題があるため、PSFやPMFを検証してからグロースハックに入るのが一般的です。PSFやPMFについては、下記の関連する記事をご参照下さい。
スタートアップの各ステージ(Seed〜SeriesC)において注意すべきこと
スタートアップの開発において注意すべきこと
スタートアップを実践して学んだ仮説検証の方法

グロースハックの代表的なフレームワーク

グロースハックで代表的なフレームワークは、AARRR(アー)モデルです。
AARRRは、①Acquisition(ユーザー獲得)、②Activation(ユーザーにサービスの価値を体験してもらう)、③Retention(ユーザーに繰り返しサービスを使ってもらう)、④Referral(ユーザーの知人への紹介)、⑤Revenue(課金)の5段階のユーザーの流れで、改善箇所を発見するためのフレームワークです。
それでは、下記で具体的に注意点等を記載していきます。

AARRR(アー)モデル

Acquisition(ユーザー獲得)

まずは、サービスを利用してもらうユーザーの獲得です。
ユーザー獲得の方法には、SEOやリスティング広告による検索エンジンからの流入、SNSからの流入、テレビCM、雑誌、チラシ等様々あります。また、近年はOnetoOneマーケティングやダイレクトマーケティング等も注目されていますので、詳細はまた別の機会に記事にしたいと考えています。

ここで、グロースハックの文脈で重要なのは、広告の効果が計測できるような仕組みを作っておくことです。
例えば、リスティング広告であれば、クリエイティブをすぐに差し替えられるようにして、A/Bテストを行うことで、効果が高い広告を検証することが重要です。

また、せっかくユーザーを獲得しても、離脱率が高いサービスでは意味がないので、下記に記載しているActivationやRetentionが重要です。

Activation(ユーザーにサービスの価値を体験してもらう)

ここでは、スタートアップの各ステージ(Seed〜SeriesC)において注意すべきことでご紹介したPSFが達成されていることが前提です。
PSFが達成されていないと、ユーザーが抱えている課題とソリューションがマッチしていない可能性があるので、アプローチを間違えている可能性があります。

その上で、ユーザーのActivationには、ユーザーオンボーディングが重要です。
ユーザーオンボーディングは、サービスを利用するユーザーが、初回の利用で離脱しないように、サービス内での体験を紹介してユーザーを定着させる取り組みのことです。
AHAモーメントとも言われるのですが、初回利用時に「このサービスすごい」とか「このサービス良い」と思われるような体験を提供するために、最初にチュートリアルでサービス内容や利用方法を説明したり、最初にそのサービスの価値を説明したりすることが多いです。
また、ユーザーオンボーディングを測定するためには、ユーザーの初回の利用から次回の利用の再訪率を計測します。そして、ユーザー行動ログ等を分析して離脱の原因を特定し、場合によってはユーザーに直接アプローチして離脱した理由を確認し、再訪率を高めるための施策を検討します。

Activationの分析は、ファネル分析が相性が良いです。
ファネル分析とは、サービス内でユーザーにしてほしいアクションに至るまでのプロセスの離脱率を把握し、どこで多くのユーザーが離脱しているかを確認する分析手法です。
GoogleAnalyticsのユーザーID機能等を使ってユーザー行動を分析すれば、比較的簡単にファネル分析を行う事ができます。
詳細は、Googleの公式ガイドをご参照下さい。
https://support.google.com/analytics/answer/6180923?hl=ja
https://support.google.com/analytics/answer/3123662?hl=ja

Retention(ユーザーに繰り返しサービスを使ってもらう)

近年流行りのサブスクリプションモデルでは、ユーザーの解約率が低くなってサービスを長期間にわたって継続すると収益の増加につながります。
スタートアップの各ステージ(Seed〜SeriesC)において注意すべきことでご紹介したように、LTVは収益を増加させることで向上します。
上記の記事でも記載しましたが、ユニットエコノミクスを健全化して、LTVを向上させるのがスタートアップにおいて必須ですので、Retentionを改善することでLTVを向上することが極めて重要です。

Retentionの分析は、コホート分析が相性が良いです。
コホート分析とは、ユーザーを特定の条件でグループ化し、そのグループを継続的に計測する手法です。
これもGoogleAnalyticsを利用すれば、デフォルトでコホート分析機能が付いています。

また、リテンションカーブも重要です。
リテンションカーブとは、X軸に利用経過日数、Y軸に継続率をプロットした曲線グラフです。
このグラフは、ユーザーの継続率を可視化するグラフなのですが、継続率が高いところで高止まりしているグラフが良い状況です。

Referral(ユーザーの知人への紹介)

Referralは、FacebookやTwitter、LINE等のメールやメッセージで、ユーザーが知人に紹介することです。
例えば、カメラアプリ等であれば、SNSにシェアしたいというユーザーのモチベーションが高いことが考えられるので、サービスの体験の中で自然にシェアできる仕組みを組み込んだり、ポイントなどのインセンティブを与えて紹介を促したりといった施策があります。

Referralを測定するためには、ネットプロモータースコア(NPS)という指標があります。
これは、PMFを達成しているかを測定する指標としても使われたりするのですが、全ユーザーの内どれだけの人が知人にサービスを紹介してくれる可能性があるかの割合を示す指標です。

具体的には、アンケートなどでユーザーに対して「あなたはこの製品を友人に勧めますか?」と質問して、0〜10の11段階の評価数値で回答してもらいます。その中で0〜6点を付けた人を「批判者」、7〜8点を付けた人を「中立者」、9〜10点を付けた人を「推奨者」と分類し、「推奨者」の比率から「批判者」の比率を引くことで得られる数値がNPSです。

また、関連してバイラル係数という指標があります。
これは、1人のユーザーが平均何人の新規ユーザーを呼び込むかという指標です。バイラル係数は、どんなに良いサービスでも、0.5程度になるのが一般的です。

Referralもファネル分析を用いて、ユーザー行動のどのタイミングで紹介が発生するのかを可視化し、Referralを向上させるためにはどのような施策が有効か仮説検証するのが効果的です。

Revenue(課金)

1人のユーザーから得られるRevenue額である顧客単価(ARPU)が指標です。
スタートアップの各ステージ(Seed〜SeriesC)において注意すべきことでご紹介したように、スタートアップではLTVを最大化させることが重要です。

1人のユーザーから得られるARPUを最大化するために、例えば、マッチングサイトで手数料でマネタイズするのであれば、マッチングの精度を上げて成約率を高めるための施策を検討します。

まとめ

以上、グロースハックの内容をまとめました。
次回以降、筆者が実際に行っているグロースハックの事例等をご紹介したいと考えています。