スタートアップにおける株式と株価

スタートアップにおける株式と株価

スタートアップにおける株式と株価

本記事のテーマ

このブログは、スタートアップを実践する中で得た知識・経験を共有することが目的です。
スタートアップを実践するというのは、会社を設立して資金調達し、事業拡大して証券取引所への上場を目指すということですが、そもそも会社とは何なのか、証券取引所への上場とはどういうことなのか、投資家の視点から見た会社について等を改めて整理しようと思い、今回から投資カテゴリーの記事を記載することにしました。
第2回目のテーマは、証券取引所への上場とはどういうことなのか、株式と株価について解説します。

株式とは

株式とは

前回の記事会社の種類と株式会社で、株式会社の制度の趣旨は、零細な資金をかき集めて大規模な会社を実現することで、その特徴は「株式」と「有限責任」とご紹介しました。
そして、株式とは、株式会社を均等に細分化した形で株式会社の株主としての地位そのものです。
株式会社は、株主と経営者が分離しており、株主は株式会社に対して出資を行い、株式会社の機関である取締役等の経営者が業務を執行します。これを「所有と経営の分離」と言います。
とは言え、創業間もない株式会社では、創業者=株主=経営者となり、所有と経営は実質的には一致していることが多いです。

株式会社に出資するということ

株式会社を設立する目的は様々ですが、スタートアップでは、通常、株式会社を設立した頃は株主は設立時に出資した創業メンバーだけです。その後、株式会社の事業規模を拡大するにあたって資金を調達する必要があります。

資金調達には、金融機関からの借入という選択肢もあるのですが、借入には信用が必要であり、創業間もない会社は借入ができない場合がほとんどです。また、借入ができたとしても、通常は経営者が連帯保証人になります。
そのような事情から、創業初期のスタートアップ企業では、エンジェル投資家やVCから資金調達する場合がほとんどです。この場合は、特定の投資家やVCに対して株式を新たに発行し、資金調達します。

そして、創業者の視点では、会社経営のために資金が必要で株式を発行して資金調達するのですが、投資家は投資に見合うリターンを要求します。つまり、株式会社に出資するということは、投資家の視点では、投資に対するリターンを期待して、投資家の持つ資金を株式会社に提供することです。

証券取引所に上場するということ

上場とは株式会社が発行する株式を証券取引所で売買できるように、証券取引所が株式会社に資格を与えることで、証券取引所に株式を上場すると、株式会社が発行する株式を、誰でも証券会社を通じて証券取引所で売買できるようになります。
一般的には、上場時に株式等の公募による募集(株式会社が新たに株式を発行すること)や売出し(株主が既に発行された株式等の売却をすること)を行います。
非上場株式も、譲渡制限が付されていなければ、相対取引で自由に売買することができるのですが、日本では譲渡制限を付している場合がほとんどです。しかし、証券取引所の審査基準で、「株式に譲渡制限が付されていないこと」という条件があるため、証券取引所に上場する際は譲渡制限は廃止されます。

つまり、上場前は特定の株主に対して株式を発行しており、譲渡制限があるため知らない投資家が株主になることはほとんどあり得ないのですが、上場すると不特定多数の一般投資家が株主になるということです。
上場前は、創業者=株主=経営者であり「所有と経営が一致」している会社も多いですが、上場すると多くの一般投資家が株主となり「所有と経営は分離」します。
また、上場するためには厳しい審査基準が設けられており、上場後も金融商品取引法や証券取引所の定めた規程に基づいて、一般投資者が十分に投資判断を行うことができるような資料を提供するため、各種開示書類(例えば、有価証券報告書や四半期報告書等)の提出が義務付けられています。
なお、スタートアップが上場するために必要な準備やスケジュールについては、スタートアップのIPO準備(上場準備)についてをご覧下さい。

投資家が株式会社に期待すること

このように、株式には上場株式と非上場株式がありますが、いずれにしても投資家が株式に対する投資のリターンを得る手段は、株式売却によるキャピタルゲインか、配当によるインカムゲインです。
ここで、経営学のファイナンス論では、配当が多いほど株主のためになるとは限らないとされています。これは、企業の総価値から負債を引いたものが株主の持ち分だという前提に立てば、配当として支払われずに企業に残る内部留保もまた株主のものなので、配当として直ちに現金を株主に還元するのがいいのか、内部留保として将来の投資に回し、株価上昇を狙うのがいいのかは、簡単に判断できないからです。
つまり、投資家がリターンを得る手段は、売却又は配当なのですが、いずれにしても株価を最大化することを投資家は期待しています。

株価とは

上場株式の株価

上場株式は、証券取引所で日々取引が行われているため、株価は実際の取引価格となり、始値はその日初めて取引された株価、終値はその日最後に取引された株価です。また、一般投資家が証券取引所で取引できる時間は、東京証券取引所だと平日の朝9時から11時半まで(前場)と、12時30分から15時まで(後場)の間です。

上場時の株価は、ブックビルディング方式が採用され、一定の指標や機関投資家の意見をもとに仮条件を設定し、それをベースに投資家の需要状況を把握して公開価格が決定されます。
仮条件は、主幹事証券会社が、上場承認前に参考価格(1株あたり当期純利益×類似上場企業のPER×IPOディスカウント率)を決定し、上場承認後に企業の経営陣が銀行や保険会社などの機関投資家に対して事業内容等のプレゼンテーション(ロードショー)を行った後、機関投資家の意見を考慮して決定します。

一般の投資家は、ブックビルディング期間中に、仮条件を基に「何円で何株を購入する」という需要申告を行い、需要申告をした投資家の中から抽選で新規公開株を購入できる権利が割り当てられます。新規上場銘柄は一般の投資家から人気の投資案件であるため、ほとんどの場合は仮条件の上限価格が公開価格となります。

非上場株式の株価

非上場株式の株価については、理論上は以下のようなアプローチの中から、諸事情を勘案して算定します。
一般的には、インカムアプローチのDCF法が採用される場合が多いです。

マーケットアプローチ

株式市価法、株価倍率法、類似取引比準法等があります。上場株式で類似企業がある場合や、直近行われたM&Aで類似の取引がある場合には、客観的な方法です。ただし、スタートアップの場合は、会社規模が大きくなく、類似の上場会社が少ないことから、そもそもマーケットアプローチは採用しないことも多いです。

インカムアプローチ

DCF法、収益還元法、APV法等があります。事業計画等を基に将来の収益獲得能力や固有の性質を反映して計算することができるという利点がある一方で、算定仮定に将来収益の予測という不確実な要素が混入することから、算定に客観性が欠けるという欠点があります。

コストアプローチ

修正純資産法等の方法があります。貸借対照表の純資産に着目して株価を算定する方法なので、客観的に評価できるという利点がありますが、将来情報が織り込まれないという欠点があります。

ただし、実務上は、例えば、上場前にVCから資金調達する場合は、以下の要素を勘案して決定し、理論上の株価算定は参考程度である場合も多いです。

  • 資金調達する会社側がいくら調達したいのか
  • 資金調達する会社側が何%の株式を発行できるのか
  • 出資するVC側がいくらでExitを想定しているのか
  • 出資するVC側が求める投資倍率はどの程度か

なお、非上場株式の株価算定について、より詳細な公認会計士が教える非上場株式の株価算定と企業価値評価をぜひご参考にして下さい。
また、スタートアップの各ステージ(Seed〜SeriesC)において注意すべきことという記事で、各ラウンドの一般的な時価総額を記載していますのでご参考にして下さい。

まとめ

今回は、証券取引所への上場と、株式と株価について記載しました。
証券取引所への上場は、多くの一般の投資家が株主になり、株式会社の所有と経営が分離するタイミングとも言えます。
なお、投資家の視点から見た会社の株価について、また別の機会に記事にしたいと考えています。