会社の種類と株式会社

会社の種類と株式会社
本記事のテーマ
このブログは、スタートアップを実践する中で得た知識・経験を共有することが目的です。
スタートアップを実践するというのは、会社を設立して資金調達し、事業拡大して証券取引所への上場を目指すということですが、そもそも会社とは何なのか、証券取引所への上場とはどういうことなのか、投資家の視点から見た会社について等を改めて整理しようと思い、今回から投資カテゴリーの記事を記載することにしました。
第1回目のテーマは、そもそも会社とは何なのかについて、会社の種類と株式会社について解説します。
会社とは
会社の種類
会社の種類には色々ありますが、会社法では4種類あり、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社があります。
合名会社、合資会社、合同会社は、総称して持分会社と呼ばれます。
2006年までは、株式会社、合名会社、合資会社、有限会社の4種類の会社形態でしたが、会社法改正によって、有限会社がなくなり、新たに合同会社が新設されました。
合名会社とは
合名会社は、会社の債務を、社員が連帯して無制限に弁済責任を負う無限責任社員のみによって構成される会社です。そして、会社の出資者が自ら経営を行います。
合名会社の歴史は、12から13世紀に中世ヨーロッパから広まったとされています。
ヨーロッパにおいて先代の商売を引き継いだ複数の子によって構成された団体から始まり、フランスで商号に社員全員の名前を用いることを要求していたことから「合名」という名称になったと言われています。
合資会社とは
合資会社は、合名会社から進化した会社企業形態で、合名会社の社員と同じ無限責任社員と、会社の債務を連帯して弁済責任を負うが出資額を限度とする責任しか負わない有限責任社員で構成される会社です。
合資会社の歴史は、中世イタリアの地中海貿易で活用された匿名出資組合が起源と言われています。
合同会社とは
合同会社は、出資者全員が有限責任社員で、会社の出資者が自ら経営を行います。
合同会社の歴史は新しく、日本では2006年に初めて導入されました。
合同会社のもととなったLLCは、1977年に新しい企業組織形態としてアメリカで初めて法制化されました。
アメリカ国内において合同会社(LLC)は急速に増加し、2006年の新会社法制定で日本版LLCとして合同会社という企業形態が誕生しました。
合同会社には、間接有限責任(出資したものが返ってこないだけの責任しか負わない)社員のみしかいないため、会社の債権者を保護するための特別な規制があります。
主に、以下の点で、合名会社・合資会社とは異なります。
- 社員は全て有限責任社員であり、また、社員は間接有限責任のみを負う。
- 各社員には出資義務があり、設立の登記をする時までに全額払い込みが必要。なお、信用や労務の出資は認められない。
- 債権者保護のために、定款を変更してその出資の価額を減少する場合を除いて、社員は出資の払い戻しを請求できない。
- 債権者保護のために、持分や出資の払戻しの際に、一定の場合には債権者は異議を述べることができる。
- 債権者保護のために、配当は利益の範囲内でしかできない。
持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)と株式会社の比較
合名会社、合資会社、合同会社を紹介しましたが、これらの3つの会社を総称して持分会社と呼びます。
持分会社は、株式会社と比較して以下のような特徴があります。
所有と経営の一致
持分会社の社員は、原則として業務執行権限を有するため、会社の所有者が経営を行います。
株式会社の株主と経営者のように、会社の所有者と経営者が違うことはありません。
持分の譲渡制限と退社の自由
持分会社においては、持分の譲渡は厳しく制限されているかわりに、持分会社の社員は任意に退社することができます。
これに対し、株式会社では原則として社員の退社(株主の出資の払戻し)は認められないかわり、持分(株式)の譲渡は自由です(ただし、譲渡に制限をかけることはできます)。
意思決定
持分会社の意思決定は、原則として全ての社員の同意で行うのに対して、株式会社は、株主総会の決議(多数決)によって意思決定を行います。
例えば、定款の作成・変更には、持分会社の場合は全社員の同意が必要なのに対して、株式会社の場合は株主総会の決議で定款を変更できます。
また、持分会社では、社員の持分の譲渡や新たな社員の加入は他の社員全員の同意が必要なのに対して、株式会社では、株式の譲渡制限を付していたとしても株式の譲渡は株主総会の決議で可能です。
会社の業務執行
持分会社の内部関係については、定款で自由に設計でき、原則として全社員が自ら会社の業務を執行します。
一方で、株式会社では取締役・執行役のような機関を置いて、それらの機関が業務を執行します。
利益の分配
持分会社では、利益分配は出資割合とは無関係に自由に認められるのに対して、株式会社では、配当は株式数に応じて行う必要があります。
株式会社とは
世界初の株式会社
世界初の株式会社は1602年に設立されたオランダ東インド会社と言われています。
オランダ東インド会社の設立の背景については以下のとおりです。
16世紀後半にスペインと対立して戦争を行っていたオランダは、スペインによる貿易制限、船舶拿捕など、経済的に打撃を受けていました。
また、その当時、東南アジアの香辛料取引で強い勢力を有していたポルトガルが1580年にスペインに併合されていたことで、ポルトガルを通じた香辛料入手も困難になっていました。
こうした中、オランダは独自でアジア航路を開拓してスペインに対抗する必要がありました。
いくつかの会社が東南アジアとの取引を本格化させましたが、複数の商社が東南アジア進出を図ったために現地(東南アジア)での香辛料購入価格が高騰しました。
また、オランダ国内でも商社同士が価格競争を行ったため売却価格は下落する一方でした。
そこで、複数の商社をまとめて諸外国に対抗しようとしたのが、オランダ東インド会社設立の背景です。
これによって、以下のことが可能になりました。
- 当時の貿易会社の大半は、航海の開始時に出資を募り、終了時に清算・解散する会社だったのに対して、オランダ東インド会社は、長期にわたる植民地の維持のために事業継続を前提としていました。
- それまでの会社は、会社が倒産したら出資者はその会社の負債まで引き受ける必要がありました。しかし、オランダ東インド会社は、人々が気軽に投資できるように有限責任にしました。
- 1602年同時期に、アムステルダム証券取引所を設立し、株式の譲渡を自由にして、市場で自由に売買できるようにしました。
株式会社の定義
株式会社の定義は、会社法の考え方に基づくと、「株主の地位が株式と呼ばれる均等に細分化された割合単位の形をとり、すべての株主が会社に対してその有する株式の引受価額を限度とする有限の出資義務を負うだけで、会社債権者に対して何らの責任も負わない会社」です。
長い定義ですが、ポイントは2つだけで、「株式」と「有限責任」です。
株式
株式会社では、会社を株式という出資単位で細分化しました。
これは、社会に散在する遊休資本を比較的零細なものに至るまでかき集めて、大規模会社を実現するためです。
また、会社と株主の間の法律関係(議決権、配当等)を簡明に処理するために、均等な割合になるように細分化しました。これによって、株主の権利は、株式を何株所有しているかによって明確に決まるため、簡単に譲渡することが可能となり、株式の取引が円滑に行われるようになりました。
有限責任
株式会社の株主は、出資を行っても、株式会社の債権者に対しては何らの責任を負いません。
これによって、投資家は危険の最大限度をあらかじめ予測して出資できるようになりました。
まとめ
今回は、会社の種類と歴史的背景、そして、株式会社とは何かを解説しました。
つまり、株式会社とは、一般の投資家が出資しやすいようにして、零細な資金をかき集めて、大規模な会社を実現するための制度です。
今後、このような背景を前提に、株式や株価、投資家の視点から見た会社についての考察を記事にしていきたいと考えています。
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