近年のIPOの状況と分析(2019年版)

近年のIPOの状況と分析(2019年版)

近年のIPOの状況と分析(2019年版)

本記事のテーマ

この記事は、近年のスタートアップのIPO件数等を集計し、IPOの状況について俯瞰してまとめたものです。
これからスタートアップで上場を目指す方や、IPOに携わっている方の参考になれば幸いです。

なお、近年上場した会社の一覧や時価総額はこちらから確認できます。

IPO件数の推移

IPO件数の推移

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年
東証1部 4 2 2 6 10 8 8 11 7
東証2部 2 7 5 6 10 9 5 8 5
マザーズ 6 11 23 29 44 61 54 49 63
ジャスダック 9 16 14 12 11 11 14 19 14
その他 1 0 2 1 2 3 2 3 1
22 36 46 54 77 92 83 90 90

2010年から2018年までのIPO件数の推移

IPO件数は、2008年のリーマンショック後が底で、その後右肩上がりで増加しています。
そして、ここ4年程は上記のように年間90件前後のIPO件数で高止まりしている状況です。
なお、ITバブルが崩壊する前の2000年頃は、年間200件程のIPO件数がありました。

それでは、以下、IPOを行った会社の状況を掘り下げて推移を見ていきたいと思います。

IPOを行った会社の売上高の推移

IPOを行った会社の売上高の推移

2014年 2015年 2016年 2017年 2018年
〜10億円 15 18 12 10 17
〜20億円 14 14 14 15 17
〜30億円 10 7 13 7 10
〜40億円 3 15 4 8 5
〜50億円 3 6 5 9 7
〜100億円 8 13 17 16 14
〜150億円 5 6 1 7 5
〜200億円 4 1 4 2 4
〜300億円 4 2 4 7 3
300億円以上 11 10 9 9 8
77 92 83 90 90

2014年から2018年までにIPOを行った会社の売上高の状況

IPOをするためには、形式基準や実質基準があります。市場によって異なるのですが、マザーズの場合は純資産額や利益額に特に形式基準は設けられていません。ジャスダックの場合は、純資産額が2億円以上で経常利益が1億円以上といった形式基準が求められます。
売上高は特に明確に基準が設けられている訳ではなく、上記のように、売上高が10億円未満の会社もあり、また、7割程の会社は売上高100億円までのようです。

IPOを行った会社の資金調達額の推移

IPOを行った会社の資金調達額の推移

2014年 2015年 2016年 2017年 2018年
〜3億円 14 19 23 17 15
〜5億円 13 27 19 26 23
〜10億円 21 16 19 21 21
〜20億円 8 11 9 8 16
〜30億円 6 6 3 5 2
〜40億円 0 2 2 3 5
〜50億円 4 1 3 1 0
〜100億円 1 4 1 3 1
〜200億円 2 0 0 0 0
200億円以上 3 0 1 0 3
72 86 80 84 86

2014年から2018年までにIPOを行った会社の資金調達額の状況

スタートアップのIPO準備(上場準備)についてに記載したように、IPOには様々な目的がありますが、目的の一つである資金調達の状況については、上記のように過半数の会社が10億円未満で、資金調達額が20億円までの会社が8割を占める状況です。

なお、2018年に上場した株式会社メルカリについて、沿革や資金調達額、時価総額等をまとめた記事がありますので、是非ご参考にして下さい。
メルカリ設立からIPOまで

IPOを行った会社の時価総額の推移

IPOを行った会社の時価総額の推移

2014年 2015年 2016年 2017年 2018年
〜20億円 3 3 1 1 1
〜30億円 2 5 6 3 2
〜50億円 3 11 11 1 9
〜80億円 13 21 24 15 15
〜100億円 6 10 11 9 14
〜200億円 28 23 15 35 27
〜300億円 6 5 7 7 8
〜500億円 5 5 4 9 5
〜1,000億円 6 5 2 8 5
1,000億円以上 5 4 2 2 4
77 92 83 90 90

2014年から2018年までにIPOを行った会社の時価総額の状況

非上場の会社で時価総額が10億ドル(1ドル100円だとしたら1,000億円)を超える企業で、起業してから10年以内の企業を「ユニコーン企業」と呼びますが、上記のようにIPO時点で時価総額が10億ドルを超える企業は極めて少ないです。
直近の2018年でIPO時に時価総額が1,000億円を超えている会社は、90社の内4社のみで、ソフトバンクが7兆35億円、メルカリが6,766億円、MTGが2,724億円、HEROZが1,633億円です。
また、2016年〜2018年の間に上場した会社の内、ユニコーン企業として認められていたのは、LINEとメルカリの2社のみです。
スタートアップでIPOを目指す会社は、ユニコーン企業になることを目指す会社も多いと思いますが、時価総額が10億円を超えるのは簡単なことではないであることがよく分かります。

なお、2018年に上場した株式会社メルカリについて、沿革や資金調達額、時価総額等をまとめた記事がありますので、是非ご参考にして下さい。
メルカリ設立からIPOまで

主幹事証券会社ごとのIPO件数の推移

2014年から2018年までの主要な主幹事証券会社ごとのIPO件数の推移

2014年 2015年 2016年 2017年 2018年
野村 26 28 17 27 23
大和 21 11 15 15 11
SMBC日興 8 21 12 11 19
みずほ 7 12 18 14 21
SBI 5 8 13 8 10
その他 10 12 8 15 6
77 92 83 90 90

監査法人ごとのIPO件数の推移

2014年から2018年までの主要な監査法人ごとのIPO件数の推移

2014年 2015年 2016年 2017年 2018年
トーマツ 28 23 23 28 21
あずさ 22 22 13 17 25
新日本 18 26 28 25 29
太陽 4 3 8 6 7
あらた 1 3 3 1 3
その他 4 15 8 13 5
77 92 83 90 90

会社の設立からIPO時までの年数の推移

会社の設立からIPO時までの年数の推移

2014年 2015年 2016年 2017年 2018年
~5年 7 11 6 15 15
5~10年 23 23 15 15 19
10~15年 21 22 29 18 14
15~20年 4 11 12 12 14
20~30年 5 9 8 11 12
30年~ 17 16 13 19 16
合計 77 92 83 90 90

2014年から2018年までの会社の設立からIPO時までの年数の状況

上記の通り、会社設立から10年以内にIPOする会社は、全体の2割〜3割程度であり、設立から15年以内に上場する会社に範囲を広げても50%程度となっていることから、設立から短期間でIPOすることがいかに大変なことかが分かります。

なお、設立から比較的短期間で上場した会社をピックアップした以下の記事も是非ご参考にして下さい。
株式会社メルカリ
メルカリ設立からIPOまで
株式会社マネーフォワード
マネーフォワード設立からIPOまで

まとめ

以上、今回は、近年のIPOの状況についてまとめました。
これからスタートアップで上場を目指す方や、IPOに携わっている方の参考になれば幸いです。
次回以降、会社設立から短期間でIPOしたスタートアップ企業や、IPO時の時価総額が10億ドルを超えたユニコーン企業等について、もう少し掘り下げて記事にしたいと考えています。