スタートアップを実践して学んだ仮説検証の方法

本記事のテーマ

この記事では、起業してスタートアップを実践している中で得た経験を基に、仮説検証の方法や仮説検証サイクルについて紹介します。仮説検証という言葉は様々な文脈で使われることがありますが、この記事では、これから起業を考えている方や起業して間もない方に向けて、主にスタートアップのプロダクト開発においての仮説検証という視点で書いています。

仮説検証の重要性

仮説検証とは

仮説検証は、これからやろうとしていること（例えば、やろうとしていることの前提になっている条件や、プロダクトを通じてユーザーのどのような状況を作りたいか等）について、その実現のために現時点において不確実なこと（例えば、前提条件の確かさや、ユーザーの状況、解決すべき課題、その課題の解決方法等）を明らかにするための活動です。
スタートアップの特に初期段階では、特に不確実なことが多いため、できるだけ早く、そして、短いスパンで仮説検証サイクルを回していくことが極めて重要です。その中でも、まず初めにやるのが、ユーザーが抱えている課題という仮説の検証です。
起業するということは、誰か困っている人がいて、その困っている人の課題に対してソリューションを提供することを前提としていると思いますが、この課題やソリューションが仮説だと言えます。そもそも、本当にそのような課題があるのか、その課題がユーザーにとってどれだけのペイン（痛み）を伴うものなのか、本当にそのソリューションにニーズがあるのかを徹底的に調査します。
この段階を、CPF（Customer Problem Fit）やPSF（Problem Solution Fit）と言ったりしますが、この辺については、スタートアップのフェーズや、フェーズごとの注意点等を記載した記事がありますので、是非ご参考にして下さい。
スタートアップの各ステージ（Seed〜SeriesC）において注意すべきこと

MVP（Minimum Viable Product）

仮説検証と密接に関連する概念として、MVP（Minimum Viable Product）があります。
MVPは、顧客に価値を提供できる最小限の製品や、それを使ったアプローチのことで、限られた時間でユーザーのニーズに基づくプロダクトを構築することができるため、無駄なコストの削減にもつながる手法とされています。
スタートアップにおいて、リソースは限られており、スピード感が極めて大事になるので、このMVPという考え方は参考になります。
しかし、スタートアップの仮説検証の出発地点は、MVPの開発ではありません。
いくら最小限の開発と言っても、開発にコストが発生するのは避けられないため、開発に着手する前から仮説検証は始まります。
ソフトウェアとして開発すべきＭＶＰの範囲を特定できない内は、「何を作るべきか」、また、「ユーザーが求めるものは何か」を徹底的に調査します。
その結果、「ユーザーに体験してもらわないとこれ以上の検証はできない」という壁に当たり、かつ、「その検証のためにはソフトウェアを開発する必要がある」と判断した時に初めてＭＶＰの開発を行います。

「わからないから、とりあえずやってみよう」とか、「唯一分かっていることがあるから、それを頼りにやってみよう」といった安易な考えが、後戻りできない致命傷になるおそれがあるので注意して下さい。
仮説検証の重要性やMVPの考え方を理解しないまま開発に着手したことが原因で失敗した体験談を記事にしていますので、こちらもご参考にして下さい。
スタートアップで起業に失敗する原因と体験談
スタートアップでシステム開発に失敗する原因と体験談

仮説検証サイクル

仮説検証サイクル

スタートアップの仮説検証は、主に、MVPを特定するための仮説検証と、MVPを検証するための仮説検証があります。
いずれにおいても、大きな流れとしては、仮説を立案し、検証活動を行い、KPI等の指標を基に検証結果を測定して、次の仮説検証サイクルに入るという流れになります。

MVPを特定する

スタートアップの初期段階において、ビジネスアイデアがあっても、いきなりシステム開発を始めるのはアンチパターンです。
まずは、ビジネスアイデアの前提となっている顧客ニーズについて深堀りし、顧客は本当に課題を感じているのか、課題があるとしてそれはどれくらいのペインがあるのか、ユーザーの課題を解決するためにはどのようなソリューションが必要であるか等を検証します。
そのためには、ペルソナ分析が必要です。ペルソナとはサービスや商品の典型的なユーザー像のことです。
ペルソナの基本情報（名前、年齢（年代）、性別、職業、勤務先（役職や仕事の概要）、年収（年収）、家族構成、結婚（婚姻歴などパートナーの有無）、居住地、性格）、ペルソナのゴール（達成したいジョブ、どうすれば成功したことになるのか）、ペルソナの悩みや課題（何を見て、どんな行動をして、何を聞いて、何と言っているか）、ペルソナのペイン（恐れていること、フラストレーションを感じていること、不安を感じていること）を明らかにします。
そして、ペルソナ像が明確になったら、ペルソナが達成したいことを実現するためのソリューションを検討するのですが、このソリューションがMVPの基になります。
MVPを特定するための課題の仮説を検証する方法としては、インタビュー、アンケート、マーケットリサーチ、アナレポ、クローリング、検索ボリューム、テスト公告等があります。
なお、このように、顧客の課題を検証して、確かに顧客は課題を持っているという事実を確認することをCPF（Customer Probrem Fit）と言います。

MVPを検証する

MVPの検証段階では、ユーザーの課題を解決するために必要な必要最小限の機能を持つソリューションの仮説を立てます。
できる限り早くソリューションの仮設の正しさを検証するために、Nice−to-haveの機能（あれば良い機能）を除外して、Must-haveの機能（絶対必要な機能）だけを開発する必要があります。スタートアップではスピードが極めて大事なので、この段階でNice−to-haveの機能の開発にリソースを割く余裕はありません。
具体的なMVPの開発方法については、また別の記事で記載したいと考えています。

まとめ

今回は、仮説検証について解説しました。
スタートアップにおいては、仮説検証サイクルを高速で回転し、MVPをしっかり定義して開発に着手することが極めて重要です。これから起業しようと考えている方は是非ご参考にして下さい。