スタートアップにおけるCFOの役割や業務の全体像

スタートアップにおけるCFOの役割や業務の全体像
本記事のテーマ
この記事は、スタートアップにおけるCFOの役割や業務の全体像を俯瞰してまとめたものです。
これから起業を考えている方やスタートアップを目指す方だけでなく、CFOを目指している方の参考になれば幸いです。
はじめに
以前に、スタートアップの各ステージ(Seed〜SeriesC)において注意すべきことという記事で、スタートアップのSeriesAのタイミングでCFO採用を検討すると記載しました。
今回は、スタートアップにおけるCFOの役割や、業務の全体像をご紹介したいと思います。
スタートアップにおけるCFOの役割は?
CFOは、一般には、「企業価値を最大化する」ために、①経営戦略や事業戦略を立案・実行し、②企業価値を検証し、③経営戦略・事業戦略に沿った財務戦略・財務計画を立案・実行し、④市場から会社を正しく評価してもらうためのIRを行う役割があります。
そのために、経営企画業務やファイナンス業務(財務、経理、税務)を実施します。
また、スタートアップはIPO(新規株式公開)を目標としていることから、その他の業務(上場準備、監査法人対応、主幹事証券会社対応、会社全般の管理業務等)も実施することが求められます。
スタートアップにおけるCFOの業務の全体像
スタートアップにおけるCFOの業務の全体像
業務 | 内容 |
---|---|
経営企画業務 | ①経営戦略・経営計画 |
②企業価値検証 | |
③業績分析・管理 | |
④IR | |
⑤その他 | |
ファイナンス業務 | ⑥財務 |
⑦経理 | |
⑧税務 | |
その他業務 | ⑨オペレーション業務 |
⑩購買・販売管理 | |
⑪マーケティング&営業 | |
⑫情報システム | |
⑬人事・総務管理 |
IPO準備
上記の日常業務に加えて、IPO(新規株式公開)に向けた準備が必要です。
具体的には、上場する年度を「申請期」として、「直前々期」と「直前期」に監査法人の監査を受けて監査証明をしてもらい、主幹事証券会社からの指導を受けて、申請期に引受審査を受ける必要があり、そのための対応をする必要があります。
IPO(新規株式公開)するということは、プロではない一般の投資家が自由に会社の株式を売買することができるようになるため、そもそも事業の成長性はあるのか、企業規模を拡大する体制は整備されているのか、投資家への十分かつ正確な業績を開示する体制が整備されていのか等の事項を厳しく監査・審査されます。
詳細は以下の関連する記事をご覧下さい。
スタートアップのIPO準備(上場準備)について
スタートアップにおけるCFOが担う経営企画業務
①経営戦略・経営計画
ベンチャー・中小企業では、経営戦略・経営計画の策定は経営者が単独で行うケースが多いですが、それでも意思決定の基礎となる情報の提供はCFOが行います。具体的には、経営方針・経営戦略に基づいた中期経営計画の策定、年度計画や事業計画の策定等です。
②企業価値検証
不確実性の高い経営環境における企業価値の最大化のために、最適資源配分や事業ポートフォリオの見直し、リスク管理といった経営課題への対応を行います。経営活動が、経営戦略・事業戦略に沿ったものか、PDCAサイクルに停滞はないか等を検証し、リスクに対処します。
③業績分析・管理
適切なKPIを設定して運用を行うとともに、予算と実績の比較検討を行い、売上や費用が何故どのように変動したのかを分析します。
その上で、関連部署間の調整や計画の見直しを行い、月次経営報告等を作成して、意思決定に有用な情報を提供します。
④IR
CFOは、株価が正当に評価され、それを維持することに努める必要があります。
会社の業績の将来予測や投資家の意思決定に有用な情報を開示することで投資家の期待に応えることもCFOの重要な役割です。
⑤その他
会社には様々な問題が発生しますが、発生した問題に適切に対処して解決するのもCFOの役割です。
また、その他、企業価値向上のためのあらゆる業務を担います。
スタートアップにおけるCFOが担うファイナンス業務
⑥財務
キャッシュフロー(資金繰り、入金、支払、請求等)の管理、資金調達(方針、調達手段、調達先等)、投資(事業投資や設備投資)や出資(子会社やその他の会社等)、余剰資金の有効活用、債権債務の管理、金融機関への対応、その他の財務リスクへの対応を行います。
⑦経理
企業会計原則に則って、会社の日々の経済活動を記録し、財務諸表を作成します。
経理方針を定めて、日々の仕訳計上を行い、伝票や証票を管理し、総勘定元帳を作成し、決算処理を行います。
また、収益や費用の計上基準を検討したり、原価計算・原価管理を行ったり、監査法人の対応を行うといったことも必要です。
⑧税務
法人税、消費税、事業税等の申告・納付を行います。
また、税務調査が入った際にはその対応も必要です。
スタートアップにおけるCFOが担うその他の業務
在庫管理、購買管理、販売管理、市場分析やマーケティング戦略、システム企画・開発、システム導入・運用、組織設計や人事制度の構築、労務管理、株主総会や取締役会対応等の業務を実施します。
これらの業務を実施するために、CFOには、業界や事業内容への深い理解、システムやマーケティングに対する知識・経験も求められます。
まとめ
以上、今回は、CFOの役割や業務の全体像について記載しました。
これから起業を考えている方やスタートアップを目指す方、CFOを目指している方の参考になれば幸いです。
今回は、CFOの役割と業務の全体像の全体像について記載しましたが、今後、各論について更新していく予定です。
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